「自分で治す婦人科講座」
産婦人科医の駒形依子先生と、婦人科専門の漢方薬剤師の堀江昭佳が、
西洋医学と東洋医学の両面から、病気について説明するこの講座。
今回のテーマは 「流産と不育症」
前編につづく後編です。
◆流産の種類
- 依子
- 流産と言われるカテゴリーの中には、大きくわけて4つあります。
1.化学流産
2.けい留流産
3.進行流産・不全流産・完全流産
4.子宮内胎児死亡
2.けい留流産
3.進行流産・不全流産・完全流産
4.子宮内胎児死亡
- 依子
- 「化学流産」は、妊娠反応はプラスだけど赤ちゃんの袋は見えない、という状態です。
これは、一瞬着床したけど維持できなかった、ということです。
- 「けい留流産」は、妊娠反応はプラスで、赤ちゃんの袋は見える。だけど赤ちゃんの心拍が確認できない。
赤ちゃん自体も確認できない。袋だけ、という状態です。
- 「進行流産・不全流産・完全流産」は、けい留流産からどこへ進行するかで名前が変わります。
- 「進行流産」は、赤ちゃんの袋が移動していく過程をエコーで見て「流産しかかってますね」という状態。
- 「不全流産」は、赤ちゃんの袋が下がってきていて、流産しかかっている状態。もしくは、赤ちゃんの袋は(流れてしまって)見えないけど、妊娠するにあたって増えた子宮内膜とかそれ以外の妊娠組織が残っている可能性がある状態。
- 「完全流産」は、妊娠反応はプラスで赤ちゃんの袋も確認できたけど、出血した後に子宮を見たら、もう何もありませんでした、全てきれいに出てますよ、という状態です。
- 進行流産・不全流産・完全流産の場合は、(赤ちゃんが)流れる状態を区別するためについている名前でしかないので、安静にしていても手遅れです。
- 5週後半から6週前半までに見えるはずの赤ちゃんの心拍が、7週を超えても見えない、という場合は、排卵が遅れていなければ、けい留流産に決まりです。
- 堀江
- その段階で、けい留流産に確定するんだ?
- 依子
- ほとんど確定する。
最終生理から8週経っていても心拍が確認できなければ、けい留流産です。
- 赤ちゃんの心拍が確認できない場合は、安静にしてたからどうとか、何かをしたからどうとか、自分が何かをしたから流れたってことではないです。
そもそも赤ちゃん自体が見えていないので、妊娠してたとしても袋が大きくなるだけで赤ちゃんはいない状態。なのでお母さんが安静していればなどは関係ないです。
- 堀江
- そこで責任を感じる必要はないし、なんとかしなくちゃって思う必要もないんだね。
- 依子
- ない。
あの時安静にしていればよかったとか、そういうことは赤ちゃんの心拍があるなしで変わります。
- 卵の問題、と言われやすいのは、けい留流産です。
- 堀江
- 進行流産・不全流産・完全流産は、けい留流産になった後の流れていく過程の名前なんだね。
- 依子
- そう。
- 堀江
- けい留流産は、妊娠反応はプラスで、赤ちゃんの袋は見える、だけど心拍が確認できない状態ね。心拍が止まった場合は?
- 依子
- 心拍が止まった場合は、子宮内胎児死亡です。
- 「子宮内胎児死亡」は、妊娠反応はプラス、赤ちゃんの袋も見える、赤ちゃんの心拍も確認できる状態。
この時点で「人」なのね。
赤ちゃんの心拍が確認できたら「胎児」として数えられます。
- この時の赤ちゃんの大きさは3−5mmくらい。
これが例えば次の週1cmになった時点で心拍が止まっていましたとなれば、名前をつけるなら「○週子宮内胎児死亡」と言います。
これを流産と表現する医師もいます。
- 心拍が確認された6週から40週を超えたとしても、生むまでは誰にでも起きうるのが子宮内胎児死亡です。
- 「6週子宮内胎児死亡」なのか「40週子宮内胎児死亡」なのか、赤ちゃんの大きさの違いだけで、同じことです。
◆不育症の原因として考えられること「血栓」
- 依子
- 「血栓」ができて赤ちゃんの心拍が止まる、ということを繰り返すことが「不育症の原因」として疑われます。
血が固まりやすいんじゃないか、血を固めるところに異常があるんじゃないか、膠原病じゃないか、と疑われる。
- 赤ちゃんの大きさになるまでに血栓が起きる場合と、赤ちゃんができる前に血栓が起きる場合と、どちらも同じとして数えて(流産・死産が)3回以上になると「不育症」と言われます。
- ただこれも、お母さんが重い物を持ったとか何かしたとかじゃなくて、血栓が原因だったり、たまにへその緒が固結びになっている場合もあったりします。
それは赤ちゃんがおなかの中で動きすぎて、何回もグルグル回ったりするとそうなる。それが原因で心拍が止まる場合もあるんです。
- 堀江
- なるほど。
- 依子
- 後は、自分でグンってやったりとか。
- 堀江
- 自分で? 赤ちゃんが?
- 依子
- そう。へその緒を赤ちゃんがグンってやっちゃうの。
- 堀江
- は〜!
- 依子
- でもこれって、ずーっとエコーで見ていないとわからないんです。
- へその緒は動くわけですよ。
赤ちゃんが自分で背中で圧迫したとかもありうる。
だけどそれを防ぐのは難しい。
頭の上にへその緒がありますよーってわかれば処置もできますけど、それはたまたま見つかることだから。
- 赤ちゃんの心拍が止まる理由は様々です。
- 今問題になっているのが、生まれた後の新生児仮死は、実はおなかの中ですでに仮死だったっていう。
- 堀江
- ほ〜!
- 依子
- へその緒が圧迫されることが多くて、という理由で。こういう症例や論文も増えてきています。
- だから、おなかの中で起きていることってわからないんですよ。動けば動くほど子宮は収縮するし、赤ちゃんとへその緒もグルグル回るし。
- へその緒は8〜10週目でもう見えるのね。まだ何mmっていう細いへその緒が。
だから血栓ができやすい状態だと不育症って疑われる。
- お客さま
- 血栓がお母さんにできるんですか?
- 依子
- へその緒の中にできます。へその緒の中の血管がつまる。もしくは、赤ちゃんに行く血管がつまる。
- 堀江
- お母さんの体の中に血栓ができてるからってことじゃないんだね?
- 依子
- そう。へその緒の幅は2,3mmなんですよ。お母さんの血管よりずっと細い。
- お母さんにとっては(血液が)ちょっとドロドロしていて大丈夫でも、赤ちゃんにとっては一瞬でつまるくらいの細さだから。
それこそ卵管みたいなものだから、何かの拍子でつまりやすいのね。
◆不育症の原因として考えられること「脱水」
- 依子
- 血栓ができやすい、膠原病で抗体ができやすい、という場合は不育症の可能性が高いんですけど、病名がつかなかったとしても、お母さんが脱水の場合でも血栓はできやすいです。
- お母さんの子宮には赤血球が集まりやすいから、頭がボーッとするのね。なのに動こうとするから、重力に逆らって血液を送らなきゃならなくなって、動悸とかが起きたりする。
- 子宮に赤血球が集まるのは赤ちゃんを育てるため。水の中に溶けてるヘモグロビンの量が増えるから、血が濃くなるのね。ドロドロになりやすい。
これがつわりとかで水分を取れなくなると、脱水が本当に怖い。つわりがひどいなら、さっさと病院に行って点滴受けてほしいくらい。
- つわりがなかったとしても、血を2倍に増やさなきゃならないから体はむくみやすくなる。
それなのに、むくみがやだ、太るのやだって水分取るのを避けると、ただただ脱水になって血管がつまりやすくなる。
- 検査で何もなくても、血栓ができやすい場合は脱水が疑われます。
ちなみに脱水は、採血ではわかりません。
- お母さんがどのくらい水分を取ってるか、これが大事。
- お茶は利尿作用があるし、妊娠すると、それが初期であっても子宮が大きくなって頻尿になるんですよ。
- 堀江
- 圧迫されるからね。
- 依子
- そう。
それがイヤで水分を取らないでいるとすぐ脱水になるし、取る水分がお茶かコーヒーだけになると脱水になるし、頻尿になるし。
それで余計に水分を取らなくなる人がすごく多い。
- 堀江
- 多いね。
- 依子
- つわりはなくて、吐かないけど、モヤモヤするとか。
- 堀江
- 飲みたくないってなるんだよね。
- 依子
- そうそう。妊娠初期ってあったかいものを受け付けにくいんですよ。
口をぬらす程度でいいからちょっとずつ水分を取れば、口の中の体温で勝手にあったまって流れていくので温度とか気にしないでいいんです。
ガボガボ飲まなければ冷えないので、そうやって水分を取ってほしい。
- だけど、妊娠したからって取る水分の量を急に増やしてもむくむだけなので、妊娠前から水分は取っておいてほしい。お水とか補水液とか。
- 過多月経の人は、そもそものベースが脱水なのね。
- 堀江
- それはどうして?
- 依子
- 生理の時に取ってる水分がいつもより増えていなければ、出ていく分が多くてどんどんマイナスになるから。
- 堀江
- いっぱい出ていく分、補わなきゃならないんだね。
- 依子
- そう。だけどたいていの人は補わない。
- 堀江
- だから足りない状態になっちゃうんだ。
- 依子
- 過多月経の人は、生理前のむくみがひどくなるのね。むくんでるからその後「飲みたくない」ってなって、さらに飲まなくなるの。
- 堀江
- その脱水の状態に体が慣れちゃうんだよね。体の水分足りてないのに、それに慣れて平気になる。
- 依子
- もともと脱水のまま妊娠すると、さらに脱水が進むよね。
- ちなみに、へその緒には血管が3つあるのね。
3つあわせて2,3mmだからね。
- 堀江
- それってずっと3本なの?
- 依子
- 奇形がない限り、ずっと3本。
- 堀江
- へ〜!
- 依子
- 赤ちゃんは、この3つの血管でしか代謝できないから、必要なものも要らないものもこれで対処しなきゃならない。
- 血管自体は太くなっていくけど、脱水になるとつまりやすくなるし、静脈がつまったら老廃物が出なくなるからね。
- 女性は生理のせいで、貧血にも脱水にも慣れやすくなっているので、意識して水分を取ることが大事。
◆脱水状態にならない「水分の取り方」
- 依子
- なので、妊娠初期はとにかく脱水に注意。
- 堀江
- ちょっと「のど渇いたな」と思ったらすぐだね!
- 依子
- そう、ホント口ぬらす程度でいいから水分取ってほしい。
- 堀江
- これ大事だね。こんな話は聞いたことがない。
- 依子
- おしっこにケトン体が出ないと、(保険適用で)点滴はできないからね。ケトン体は飢餓状態で出るのであって、脱水状態だけでは出ないんだよね。
- 堀江
- 病院での点滴は、体が飢餓状態かどうかがポイントなんだ!
- 依子
- そう。外来だと500mlしか点滴できないよ。入院だと1000mlできるけどね。
- 『OS-1』っていう経口補水液がありますけど、あれは点滴と同じ成分なので、水分取れる状態なら口から取ってほしいです。
- 堀江
- どのくらい飲めばいいの?
- 依子
- 一日1本。
- 堀江
- そんなんでいいんだ!絶対飲んだ方がいいね!
- 依子
- 妊娠糖尿病とかもあるから、ペットボトルに入った糖分が多いものはあまりオススメできません。
昔、運動部の部活の時に飲んでたような粉末状のをうす〜く薄めて飲むのがいいと思う。
- 堀江
- 「若干血栓の傾向がありますよ」とかって診断されても全員が血栓でつまるわけじゃないもんね。
(流産の)可能性を減らすなら、経口補水液を一日1本飲めば確率は下がるということだね。
- 依子
- そう。妊娠前、なんなら生理中だけでも飲む習慣をつけておけばいいよね。
- 堀江
- そうだね。
- 依子
- 脱水って、何が怖いって、寝れば寝るほど悪くなるんですよ。
- 堀江
- それはどういうことですか!
- 依子
- 寝てる間って水分取らないでしょ?
- 堀江
- なるほど。
- 依子
- 脱水で倦怠感があって寝たとしても悪くなるだけでしょ。水分を取らない限りはすっきりしない。
- 堀江
- これからの季節要注意だね。
- 依子
- そう。夏に向けて汗をかきやすくなるし、妊娠すると発汗しやすくなるし、もっと水分取ってほしい。
- 初潮の時から過多月経の人はずーっと脱水なのに、適度な運動とかってホットヨガを始めてその日だけ水1リットル飲んで、後は飲まない、とかね。
- 堀江
- 強烈に脱水だよね。
- 依子
- 水分を取る習慣、大事!
- 堀江
- 漢方でも対策はできるけど、一番効果的で手軽で理にかなってるよね!
- 依子
- これがね、「こういう話を聞いてきたし」って今日から急にたくさん飲もうとするでしょ?
- で、「むくむじゃん!」「全然よくならない!」ってさらに飲まなくなるから、やっぱり脱水のままなんだよね。
- 毎日ちょっとずつ、起きがけ、寝る前だけ経口補水液を飲むとか、水にちょっと塩を入れて飲むとか、そういう習慣をつけていって「むくまないな」っていうのを確認してから(飲む量を)増やしていった方がいいよね。
- よく芸能人が「毎日水2リットル飲んで調子いいです!」とか言いますけど、その人たちは昔からその習慣でいて今を切り取って話しているだけだから、急にそれと同じことをしてもおかしなことになるよね。
◆大切な「塩分」と「香り」
- 依子
- 本当にちょっとずつなの。
ちょっとずつ(飲む量を)増やしていくのが大事。
- しかも、水だけだとふやけるから、ある程度の電解質が必要なんですよ。
- 堀江
- 経口補水液は体の中の塩分濃度と同じにしてあるからいいんだよね。
- 依子
- 脱水の時って、塩分足りないから濃い味が欲しくなるのね。なのに妊娠した時って「塩分の取りすぎは……」って気にしたりするじゃない? で、取らない。
- 体が欲しがってる時、食べたい時は欲しい時だからね。そういう時は塩分取ってもいいんですよ。
- 堀江
- 塩分取る時は、食卓塩とかはダメ。岩塩とかがいい。ミネラルが入った海の塩がいいよね。
- 依子
- それこそ飲めない時はバスソルトでもいいんだよね。皮膚から吸収。
- 堀江
- そう!今バスソルトを試作してて!今までのバスソルトもよかったんだけど、青色3号とかの着色料が入ってるのね。それが気になって。あと天然香料がいいなって。
- 堀江
- それと、免疫ってあるじゃない?
普段の自律神経のバランス自体が、着床するしないということにすごく関係してる。
ストレスが免疫バランスに関係するから。
- ならばストレスはなるべく緩和するべきなんですよ。それと、アトピーで不妊の方も多いし。
- 依子
- 免疫が亢進してるからね。
- 堀江
- アトピーが収まると妊娠しやすくなるよね。
- 依子
- 内熱が高いから卵がのぼせるんだよね。
- 堀江
- それもあるよね。
- で、バスソルトをアトピーの方に使ってもらったらすごい妊娠されて、不妊の方にも使ってもらったら妊娠されて、毎年冬の妊娠報告がすごく多いんですよ。
「なんでこんなに冬だけ妊娠率が高いんだろう?」と思ったら、「もう絶対バスソルトだ」と思って!
- こういう経緯があるから、体からミネラル吸収ってあるけど、香りも本当にすごいなって思う。
- 依子
- お風呂ネタで言ったら、煎じ薬の余ったやつをお風呂に入れたりもいいよね。
- 堀江
- あ、それもいいね。
- 依子
- 煎じ薬を出した後のカスを捨てずに取っておいて、それをお風呂に入れてからお湯入れて。ちょっと経ってから湯船に入ると皮膚からも吸収するし、保湿成分もあるし。
- 堀江
- やっぱり香りがいいよね。
- 依子
- 気にならなければ香りもいいよね。家族みんながイヤじゃなければね。
- 堀江
- 嗅覚って、人間の五感の中で一番古くて、脳と直結してるでしょ。
香りの影響って大きくて。
- 漢方の煎じ薬がいいのは、煎じた時の香りがいいんですよ。粉薬の効き目が落ちてしまうのは、工場で煎じた時に香りが飛んじゃうから。
- ストレスを緩和させるには香りが強い方がいい。ミントでスッとしたり、レモンでふっと気持ちが楽になったり。
漢方ではそれを利用してるんです。婦人科系とかストレス系の漢方は、香りが強いものが多いんですよ。
- 香りもすごく大事。
◆水分は電解質とともに取る
- 依子
- 手術の時、特に時間がかかる手術の場合、おなかが開いた状態が長く続くと、腸が空気にさらされてすぐ水分が蒸発して乾燥しちゃうんですよ。
- (体内の)組織は乾燥するとそれだけで傷んじゃうので、乾燥しないように、ダラッダラにぬらしたタオルとかで保護したりするのね。そのくらい、胃腸って潤っていないと仕事しないんですよ。
- 腸の細胞が脱水になっていたら、いくらがんばって血を増やすお薬を使っても、水がないと血は増えないんですよ。
- 正直、ごはんを食べずに点滴だけで一週間過ごしても、傷は治るし、血も作られる。
- 電解質さえ取っていれば、ごはんを食べなくても体は何とかなるんですよ。
だから食べ物に気をつけるよりも水分に意識を向けて、きちんと細胞がターンオーバーできるように電解質を補充することを考えた方がいいです。
- 堀江
- しかもOS-1を一日1本でいいんだもんね。
- 依子
- うん、1本200円くらいはかかるけどね。
- 堀江
- かなり薄めのスポーツドリンクとかもいいんだよね?
- 依子
- いいよ。粉のやつね。ペットボトルより粉の方が安いし。多少の添加物は入ってるけど、ただの水よりはいい。
- 堀江
- 水に岩塩を少し入れるだけでも違うよね。
- 依子
- そうだね。海の塩とかミネラル豊富なやつを水にひとつまみ入れてふっておけばなんとかなる。
- 漬物食べながらお茶飲む、みたいなね。
- 堀江
- そうそう、昔の人は理にかなってるよね。
- 依子
- 昔なんてお茶は高級だからみんな水しか飲んでない。
- 堀江
- 体を動かすから汗もかくし、ちゃんと水分と塩分を補給してたんだよね。
- 依子
- 井戸水はミネラル豊富だからいいけど、浄水器のお水はミネラル何も入ってないので、それをひたすら飲んでいてもむくむだけ。
ひとつまみのお塩を入れるとかがいいよね。
- 堀江
- 生理食塩水は塩分濃度が0.9%だから、1リットルに対して9gのお塩が入れれば手軽に作れます。
- 依子
- 体の循環血液量は体重の6割くらいだから、血液量が5,6リットルだとして、すでに10g以上の塩分は必要なんだよね。
なのに一日の塩分5gとかだと足りないよね。
- 堀江
- お塩がないと体に水分を蓄えられないもんね。
- 依子
- そう、お茶は塩分ちょっと入ってるけど利尿作用の方が強いから、体に水分を蓄えずに出ていくだけだよね。
コーヒーもそう。
- 堀江
- こういうのって生活の部分だから見落としがちだけど、すごく大事だよね!
- 依子
- 最近「水は味がないから飲めない」って人が増えてるから、塩を少し入れるとかね。お茶は何リットルも飲むものじゃないからね。
- 堀江
- ラーメン屋にルイボスティーがあったりするけど、あれは体が油っぽくて熱っぽいところへ飲むからいいわけで、普段から飲んでたら体冷やすよね。
◆大事なのに、どうして病院では教えてくれないの?
- お客さま
- こういうことって婦人科の先生の間では常識なんですか?
- 依子
- そんなことないです。看護師さんも知らないもん。
- お客さま
- 病院以外の生活の方が長いので、こういう話はすごく嬉しいですけど、やっぱり病院は医療なんですね。
- 堀江
- 医療はやっぱり治療なんですよね。
- 依子
- そうは言っても、具合が悪くて病院に行ってるのに、「水飲んでください」って言われても納得できなくないですか?「いやいや病院だったらそれ以上のことしてくれるでしょ?」ってなるじゃない?
- だからそこじゃない部分の説明がメインになるんだよね。
- このくらいの風邪なら薬いらないなってこちら(医師)は思うけど、「こんなに待ったのに薬くれないの?」って言われちゃうから、いらないと思っても薬出すよね。
- 堀江
- 「水飲んで〜」っていうだけでは病院が儲からなくなっちゃうし。
- 依子
- こういう基本的なことって、病院では自然にやってることなんですよ。例えば、手術の時にたくさん血が出た場合、その分点滴を入れて体の水分量は保ちましょうとか。
- 病院では当たり前にやってるんですけど、それを患者さんの生活には落とし込めないんですよ。別に言うことでもないというか。
- 手技をすることでのデメリットはちゃんと伝えないといけないけど、生活の部分でこうしてくださいという話は……。正直、患者さんが家で何をどうしてるかは(医師は)わからない。
- 堀江
- ぼくのカウンセリングでも、まず聞くのは「寝た?」とかそんな基本的なことばっかりですから。「体重は?」とかね。基本的なことが大事だよね。
- 依子
- 「仕事はやめたくない」「今の状態のまま妊娠したい」って言われるでしょ。じゃあすぐできることは?となると、不妊治療しかないんですよ。体を立て直すための猶予を考えないなら、ね。
- 堀江
- 日本って、毎月採卵したりするでしょう? そんなことする国は日本くらいなんですよ。中国も欧米も3ヶ月に1回とかのペースでするんです。
- だけど日本人は待てない!何かしていないと不安だから、毎月毎月治療しちゃう。それが余計に着床しにくくさせてるのもあると思うんだよね。
- 採卵した後って生理が乱れるじゃないですか。
体に負荷がかかってるんだから、その負荷を取り除く時間が必要じゃないですか。
体を休ませる時間が必要なんですよ。
- 依子
- ホントそう。採卵って、朝の7時とか8時にするんですよ。その後仕事に行くとか、意味わかんない。
- お客さま
- だけど病院で「仕事行っていいですか?」と聞くと、「大丈夫ならいいですよ」と言われます。
- 依子
- 「大丈夫なら」って言われてるでしょ? 大丈夫だって自分が思ってるだけなんだよね。
- 堀江
- 病院では「行っていいですよ」って言われるもんね。
- 依子
- いや、そりゃ行かない方がいいですよ。体に針刺してるんだから。
おなかは出血してるんだから。動けば動くほど傷が開く可能性はあるからね。
- 卵巣って血流が豊富だから、卵胞液取っただけでもコップ一杯分くらいの水分は取られているからそれだけで体は脱水だし、そりゃ休んだ方がいいに決まってる。
- だけど、そう提案してもだいたい断られる。午後の仕事があるから麻酔はイヤだって言われたりね。
- 堀江
- 大丈夫大丈夫って毎月(不妊治療を)やってもさ、卵の数はすごく減ってるんだよね。あれでなんで毎月やるんだろうってすごく思う。
- 依子
- 一回やると卵の数は減るけど、また来月採卵できるかどうかの保証はないからね。だから患者さんの都合で「やる」って言われたらやるしかないっていう事情はあると思う。
- だけど、早発閉経って言われた人が妊娠する場合もあるからね。
- 堀江
- 焦る気持ちはわかるんですけど、求める時っていうのは、獲物を狙う状態だから。
- 依子
- 交感神経がガンガン働いてるよね。
- 堀江
- そうなんだよね。そんな時の免疫の状態って、妊娠に向いてないんですよ。
- それを待てる状態、そういう心の状態になれる時こそ、自律神経のバランスが妊娠向きになるのかなってぼくは思う。あくまでぼくの感覚ですけどね。
- 依子
- 交感神経優位の時は女性ホルモン出ないから、卵胞育たないよ。
- 堀江
- ストレスで生理が止まるのはそれだもんね。
◆今あるエネルギーを、どこでどう使うか?
- 依子
- 人が一日に使えるエネルギーが100あるとします。
排泄・吸収・消化・メンテナンス・ホルモンバランス・傷の修復・再生とか、生きるために最低限必要なエネルギーを50とします。
- 生きるだけで半分使っていて、その他に、排卵・生理・妊娠・妊娠維持・分娩・子宮収縮して止血・授乳・子育てがあるとして、これらで30くらいだとします。
- 生きるためだけで50使っていて、残り50の中で排卵や生理のために30くらい使うとなると、残りは20くらいしかない。
- この他に仕事をしたりもするじゃないですか。他にもいろんなことにエネルギーを使うから、100ギリギリで生きていることになるでしょう?
そうなると、妊娠に向かうエネルギーが足りないんですよ。妊娠したとしても、それを維持するエネルギーも足りない。
- じゃあ何を削るか? 消化を遅らせて胃もたれさせる、傷の治りが遅くなる、肌のターンオーバーが遅くなる、そういう毎日のちょっとした必要なものを減らして、妊娠へとエネルギーを回すわけじゃないですか。
- 先天的なエネルギーは決まっているからそれはどうしようもないけど、後は、後天的なエネルギーをいかに増やすかだと思うんですよね。
- 便秘する。それは水分が足りないのか、出すエネルギーが足りないのか。後者の場合、休みの日はやたら出るとかね。
- 堀江
- 仕事行かないから(笑)
- 依子
- 仕事のエネルギーがなくなるからね。
ということは仕事のせいで排泄のエネルギーが削られてることになりますよね。
- 生理で頭痛がするからロキソニンを飲む。その後たくさん出血したら回復するのにまたエネルギーを使うけど、そのエネルギーは足りてない。
- で、仕事をやめるじゃないですか。「余分なエネルギーができた!」って思いがちなんですけど、みんな暇になるから、その分ずーっと悩んでるんですよ。
- 堀江
- アハハハ(笑)
- 依子
- 暇だからひたすら悩むのね。余分なエネルギーをどんどん悩む方へ回しちゃう。
で、「仕事やめたのに妊娠できない」ってなる。
- 結局、妊娠を維持できないってことは、維持するエネルギーが足りないんですよ。じゃあどうやってエネルギーを増やすかって言うと、血を増やしたり水分を増やしたりすればエネルギーも増えていくんですよ。
- 流産を繰り返す人、不育症の人は、卵子も作られてるし排卵もする。そこまでのエネルギーは確実にあるわけだから、あとは妊娠を維持するためのエネルギーが必要なだけなんです。
◆ちゃんと寝ていますか?
- 依子
- で、私は手っ取り早く「水分とってください」って言いますけど、血を増やしたりも大事ですよね。それは堀江さんが得意だから。
- 堀江
- 血を増やすには胃腸が大事!
- 依子
- 酸素と鉄がくっつかないと体中に栄養を運べないので、鉄も必要だね。
- 堀江
- 鉄とタンパク質、大事。
- 依子
- 鉄が少なければ、いくらがんばって呼吸したところで酸素が体に届かないんですよ。だからサプリでもいいので鉄を取りながらちゃんと呼吸すること。
リラックスできてないと呼吸は浅くなります。
- 堀江
- そうなると代謝が悪くなるもんね。
- 依子
- まずは「しっかり呼吸してしっかり休む」っていう、生きるための基本が大事なんだよね。
- 堀江
- 本当にそう思う!寝てください!
- 脳の中にある扁桃体は、恐怖とかストレスなどの攻撃性を担当していて、扁桃体はイライラしたりとか攻撃的になる性質があるのね。
- だけどこれは普段、抑制されているんですよ。だけど、睡眠不足になるとその抑制が外れちゃうんです。
MRIでデータをとった脳科学者がいて、外れると攻撃性が60%も上がることがわかっていて。
- そうなると体はバトルモードになって、自律神経がそっちに傾くとおかしくなってくるのね。
- 扁桃体は免疫系にまで影響しちゃう。だから「寝ましょう!」って話なんですよ。
- 睡眠不足の時って、判断能力が落ちるのわかりますよね?
- 人の心や感情を読む心(EQ)も明らかに落ちるんです。人の気持ちを判断できなくなる。だから人間関係もおかしくなる。イライラする。
- 人間関係が悪くなる、自分の置かれている環境も悪くなる、だから人生自体が悪い方へいっちゃう。もったいない!
- こういうことって無意識で行われているから、勝手に腹を立てたりとか、勝手に悪い方に判断して周りへの影響も悪くなっていく。それが怖いよね。
- でも、寝るとそれは減る。0にはならないけど、寝ると抑制がきくようになる。そうすると、周りの意図をくみやすくなるし、人間関係もよくなるから、人生自体もいい方へいきやすくなる。だから免疫系もよくなっていく。
- だから、寝て!とにかく寝てください。カウンセリングでも寝てない人が多くて。
寝るだけで今より確実によくなります。本当に自分がしたいことの判断ができるようになってくるから。
◆太陽の光を浴びていますか?
- 堀江
- 病院でビタミンDをもらったりしませんか?
ビタミンDはホルモンに近いと言われていて、着床に関わっているとも言われているんです。
- 小魚食べましょう!干ししいたけもぜひ食べてください。
- それと、もうひとつ!あんまり紫外線を嫌わないでください。
- 紫外線でビタミンDが合成されるんです。
- 日焼け止めをぬって、日傘をさして、人によってはあれもするじゃない? 黒いやつ。自転車に乗ってる人でよく見かけません?
- ビタミンDは紫外線で活性化するのに、日よけで全身かためてたらどこで活性化されるのかなって。
- 依子
- 太陽の光を浴びないと免疫は上がらないもんね。
- 堀江
- そうそう。
- 依子
- 「完全防備でも外にいれば太陽の光を浴びてるでしょ?」って勘違いしてる人がいるんだよね。
- 子どもを外で遊ばせるのは、免疫を上げるためもある。ビタミンDで骨の活性化を促して、成長につなげるわけだから、大人もある程度(太陽の光を)浴びないと、骨の再生修復とかは促されないよね。
- だけど別にわざわざ海とかに行かなくてもいいです(笑)
- 堀江
- 窓際とかでもいい。20分でいいんですって。粘膜も強くなるし。朝の日差しのよわい時間帯に日光を浴びるのがおすすめ。
- 昔から言うでしょ? 妊娠には小魚食べましょうとかね。そういうことってやっぱり意味があるよね。
- 依子
- ある。
- シミになりやすいなりにくいは体質もありますけど、日焼けするってやけどするのと同じなんですよ。だから体の水分が足りないと一瞬でシミになったりする。
- 海に行く、プールに行く、という時も電解質が入ったものを飲むなどしましょう。
◆体のメンテナンスには「睡眠」と「水分補給」
- 依子
- それと、夜目が覚めちゃう人がいますけど、そういう時にちょっと水分取るとか。
そういう風にして体のメンテナンスをしていくのもいいと思います。
- 堀江
- 何時に寝てます? え、0時すぎ?
もっと早く寝ましょう!
- 依子
- 深く眠れればいいけど、悩んでるとそうはならないから。
- 堀江
- まずは水分補給、それと寝ること。
これはベースとしてぜひしてほしい。
その上で何かするなら、漢方などの相談をしてもいいかなと思います。
- 病院に行くとお金がかかるし、漢方もありますけど、やっぱりお金がかかる。
だけど寝るのはただだし気持ちいいし!ぜひぜひ寝ましょう!
- みんなお金を使う方にいきやすいんですよね。
だけどまずは、お金がかからない睡眠と水分補給!
- あともうひとつ、自分を責めないでください。
ゆっくり寝て、水分補給。それと、太陽の光を浴びましょう!
いかがでしたでしょうか?
〈前編〉〈後編〉にわけてお届けしました
【自分で治す婦人科講座】「流産と不育症」
最初から読みたい方はこちらからどうぞ!
〈医師監修〉流産と不育症の定義、その原因【自分で治す婦人科講座「流産と不育症」前編】
参加してくださったみなさん、
ありがとうございます!
◆産婦人科医 駒形依子先生プロフィール
山形県内の高校卒業後
H13年東京女子医科大学入学
H20年米沢市立病院入職
H24年東京女子医科大学病院産婦人科入局
H26年東京女子医科大学東洋医学研究所入局
H28年からフリーランスで活動
H30年1月こまがた医院開業