「自分で治す婦人科講座」
病気を知ることは、自分で治すための大切な一歩。
病気やその症状で悩んだ時、病院に行きますよね。
病院にいって「あなたはこういう病気です」と言われる。
だけど、その病気のことをよくわかっていなかったり、
治療の選択肢をよく理解しないまま治療をしていたり。
いろいろ聞きたいことがあるけれど、
結局お医者さんには質問できない──。
それはすごくもったいないことだと思う。
そんな想いから始まった「自分で治す婦人科講座」
産婦人科医の駒形依子先生と、婦人科専門の漢方薬剤師の堀江昭佳が、
西洋医学と東洋医学の両面から、病気について説明します。
今回のテーマは「流産と不育症」です。
◆妊娠は奇跡、流産は自然の流れ
- 堀江
- 今回は流産と不育症、補足のテーマで不妊症についてお話します。
まず伝えたいのは、流産は悪いことではないし、着床しないのも悪いことではないということです。
- 精子と卵子が出会うのは、それだけで衝撃的な出来事です。出会った中でやっと生き残った4割の受精卵が細胞分裂をして、卵管から子宮に移っていく。その過程で「大丈夫かな」という確認が常に母体の中で行われています。
- 着床して妊娠が成立しても、胎盤ができて、人の形になって、脳ができて……という間、ずっと「大丈夫かな、大丈夫かな」というチェックが入っているのです。それでダメだった場合に流れていく、それが流産です。
- だけどそれは、体がダメだから、卵がダメだから、精子がダメだからということではなくて、そこで初めて一人の人間ができあがるわけですから、自然淘汰なのです。
- 新しい命が来るたびに、大変な過程を経る。大変な過程だからこそ、流れていくこともあります。流産を繰り返す方もいらっしゃいますが、それを悪いと受け取る必要はまったくないです。
初期の流産は、気付かない人もいるくらいですから、自分を責めないでほしい。
- 時代の流れかもしれないし、環境なのかもしれないけど、その事自体が悪いことだとか悲しいことだと思わなくていいと思うんですよ。ただ、こうした方が妊娠しやすいよね、着床しやすいよね、という方法はあるので、それについてもこの講座でお伝えしていきます。
- 流産は、医学サイドからは「妊娠できる」という判断でしかなく、ぼくら専門家は、割とポジティブに受け取ることでもあるという点を踏まえて、話を聞いてもらえればと思います。
◆妊娠できるかのポイントは、排卵があるかどうか
- 依子
- まず、妊娠を希望されている方が気になるポイントは、排卵と採卵の2つです。
妊娠する前に卵子が採れないと始まりません。
この時、お家でできることは、「排卵チェッカーを使うこと」と「基礎体温を測ること」。
病院でできることは、「卵胞チェック」と「ホルモン採血」です。
- 排卵チェッカーは、尿に紙を入れて、ホルモン値を見ながら排卵日を予測するものですが、実は、国内のものと海外製では感度が全然違います。
- 堀江
- えー!そうなんだ!
- 依子
- 感度は、良すぎても悪すぎてもダメなのね。
検査結果は、その時の尿の濃さでも変わるし、いつ測るかによってもブレが出るので、単なる目安でしかないです。
- 皆さん、(基礎体温の)高温期を気にされるんですけど、大事なのは低温期の方。
低温期の過ごし方を間違えたり、その時期に忙しすぎたりすると、体温は思ったように上がっていきません。
- 堀江
- 本当にそう思う!
- 依子
- 大事なのは低温期。
エストロゲンが分泌されないと、高温期の体温は上がっていかない。
黄体ホルモンがピークになる「LHサージ」がしっかりバーンって出なければ、(基礎体温の)グラフの形は四角形より山型になりがち。
高温期への温度はダラダラ上がる感じになります。
- 堀江
- ホルモン採血は、どのくらい時間がかかるもの?
- 依子
- ホルモン採血は、体内にプロゲステロンが分泌されたのを見ることによって、排卵したかどうかを確認するんだけど、時間は最短でも3日かかります。長いところだと一週間かかることもあるかな。
- 堀江
- 検査室があるところだと、もう少し早くわかる?
- 依子
- すごく待たされるけど、その日にわかることもあるね。
- 堀江
- 卵胞チェックはどう?
- 依子
- 卵胞チェックをする場合、原始卵胞がいくつかある中で20−24mmまで育つ「卵胞液」をチェックするのね。
卵胞を見ているわけであって、卵子を見てるわけではないです。
卵子はエコーで見えません。細胞自体は0.02mmしかないのね。
卵胞液が育って、卵胞がそのくらいまで育っているからと言って必ず卵子が育っているとは限りません。
- 選ばれし1個の卵胞から卵子が出ることを排卵と言うのであって、全部の卵胞に卵子がある状態は、ほとんど見たことがないです。ほぼ空胞がある。お薬を使って何個も卵胞を育てても、多くは空胞なんです。
- 自分に卵子を育てる力があるかどうかを判別するには、採卵するか、妊娠するしかないんですよ。
一度でも妊娠したことがあるなら、自分には卵子を育てる力があるということです。
妊娠できる人は、その後出産しなくても、卵子が育つ体であるということです。不妊の人との違いは、そこです。
- ここで見落とされがちなのが、5~6個卵胞が育って卵子を採りますという場合、紙コップ1杯分の卵胞液がとられるので、体はかなりの脱水になってるっていうこと。
OHSS(卵巣過剰刺激症候群)という、卵胞が育ちすぎてお腹に水が溜まって死に至る病気があって。その場合は急いで点滴しないと母体が危険な状態になることもあります。
- 卵胞を育てるときは、ものすごく体液を使うんです。
- 堀江
- それって「陰」だよね。漢方では、低温期が「陰」で、高温期が「陽」なんですよ。
◆妊娠に関わる、むくみと脱水
- 依子
- ホルモン剤を使って排卵させる場合、散々育てて採るだけで、その後何もしないのね。まあ、する必要もないんだけどね。
お母さん側も、何も言われないから何もしないでしょ。そうすると、体は脱水のまま。
生理が来て、過多月経だとさらに脱水になって、どんどん着床しにくくなるんですよ。
- 堀江
- 高温期にむくむのは、そういうのもあるんだね。
- 依子
- そう。生理に向けて赤い液が出るから、妊娠中に水血症になるのと同じ原理。
分娩の時は、300mlくらい出血します。それで、ヘモグロビンが濃くなるので、血を薄めるためにむくむんですよ。
- 堀江
- 会臨月の時は、この状態?
- 依子
- 100~300ml出血するから、これだけむくませておけば大丈夫かな、というのが臨月の妊婦さんなんです。
- これの小さいバージョンが毎月生理で行われてるわけですけど、生理の時は出血量が20~140mlだからあの程度ですんでるけど。
300mlくらい出てる人も多いから、どんどん血虚(体液が少ない状態)になって、水も足りない、血も足りない=エネルギーも足りない状態になっちゃう。
- 生命力は、気血水の正三角形で表すんですけど、この三角形が大きくないと、妊娠はしないんです。
じゃあなんで、それがわかってて(病院では)点滴もしてくれないのかというと、点滴の適応がないからです。
その分高いお金がかかるので、みなさんがどこまで希望されるかってことになります。
- 過多月経の具合によりますけど、正直、ポカリやOS1を飲むだけで(脱水は)少し解消するんです。
これは、自分がどのくらい出血してるか知らないと、対応できないです。
生理前のむくみは、ないといけないものなんです。むくみのせいで水分をとらないのは逆効果。妊娠の時もそう。体が自分を守るための反応なので。
- 堀江
- 本当に体には理屈があるなあって思う。
理由があるのに水分をとらないでいると、余計に調子が悪くなっちゃう。
- 依子
- なぜかルイボスティーを飲む人が多いんですけど、ルイボスティーは利尿作用が高いから、どんどん脱水になるんですよ。
利尿作用と下痢作用がすごいから、正直あんまり飲んでほしくない。
飲むなら、ご縁授茶とかほうじ茶とかにしてほしい。
- プーアル茶も「出して終わり」だからオススメしません。これらは「出す方の薬膳」であって、補う方がないから、みんなにやめてと言っています。もしくは減らしてって。じゃないと、すごく脱水が進んで体が冷えるから。
- 堀江
- ルイボスティーって、日本で育ったものじゃないから、日本人にそんなに合ってないと思うんだよね。
カフェインレスがいいと言って飲む人は多いけどね。
- 依子
- カフェインは興奮剤であって、ダメなわけじゃない。
ルイボスティーは温めて飲んでも体を冷やすお茶だから、日本人には合ってないよ。
- 堀江
- ご縁授茶を作るとき、(ベースのお茶が)ルイボスティーというチョイスはなかったんだよね。
- 依子
- たまに一杯飲むくらいならいいですけど、水筒に入れて持ち歩いてる人には「今すぐ捨てて」と言いたい。
基本、女子はみんな脱水だから。
- 堀江
- 脱水に加えて、特に6月くらいにみんな調子悪くなるんですよ。夏バテっぽくなるの。
血管が広がるし、汗をかくから、血管の中がスカスカになるんですよ。
- 依子
- 脱水が進みすぎて、どこからでも吸収しようとするから、皮膚からでも吸収するの。だからむくむの。
- 堀江
- 夏場の脱水には、ぜひ「麦味参(ばくみさん)」という漢方をオススメしたい。
苦くないし、飲みやすいんですよ。水で薄めて飲むといい。脱水が治る。
これは「陰」も補うので、僕も気虚なので飲んでいますけど、すごく楽になる。
- 依子
- うちは家族みんなで「五苓散(ごれいさん)」。
むくんでいるときは(水分を)出してくれるけど、脱水の時は出さないようにしてくれるから。
◆精子と卵子のエグい出会い
- 依子
- 「LHサージ」という排卵チェッカーで気にする部分、これはストレスや不眠、寝不足、過緊張のときは出にくくなります。
なので、排卵の時期に失恋したり、仕事が変わったり、出張に行ったり、初めての仕事をしたりすると、その日は出なかったりします。
- 排卵しないと、卵胞だけ育って不正出血して、また次まで排卵しないので、バランスが崩れます。
生理前の子宮内膜は、15~20mmくらいの厚さになるけど、その厚さには個人差があります。
エストロゲンがしっかり出ないと内膜は厚くならないし、不妊治療が長引くと厚くなりにくいです。
- 卵胞から卵子がプッと出てきて、卵管の真ん中あたりの卵管膨大部で、精子と出会います。ここまでに一週間。
みなさん、着床のイメージって、バケツで運ばれて動いて、ゆっくり降りてふわっといくみたいに思っていますけど、そんなやさしくないです。
厚くなった内膜の中に、(精子が)めり込むんですよ。顕微鏡で見ると「グリッ」ってレベルで。だからその時に出血するんです。
- 子宮内は、色んな体液が流れてくるから、めり込んでおかないと、すぐ流れちゃうんですよ。
- 堀江
- ラフティングだね、イメージとしては。
- 依子
- (精子が)内膜の表面にいたら流れちゃうから、内膜の中にいくんです、グリッと。
手も足もない受精卵が、組織を破って入るわけですよ。
- 堀江
- みんな、着床がそんなにエグいとは思ってないよね。
- 依子
- 着床の位置は、子宮内に受精卵を戻す時にも決められないんです。
すごく厚くなった内膜があっても、卵管で着床したり、落ちて腹腔内で育ってることもあるからね。
- 着床に関しては運ですけど、精子と卵子が出会うのって、結構エグい。受精すると、花火が出るんですよ、ビックバンみたいに。
そうして出会ったら、遺伝子以外は全部排除するんですよ。だからもう殺戮現場ですよ。
- 本当に、戦場を乗り越えて受精するんです。
そもそも膣内のおりものの炎症が強いと、精子は全滅。
基本的に、すべての異物を受け入れる(女性側の)免疫の問題があります。
◆流産とは?
- 依子
- hCG検査は市販のものでも感度が高いので、着床から3週~4週で反応が出ます。
でも赤ちゃんの胎嚢が確認されるのは、4週の後半から5週。陽性が出た時点で病院に行っても、何も見えません。
子宮に6~10mmくらいのがピッと見えればいい方です。
- (hCG検査の結果が)陽性だったけど流産、となると、それは「化学流産」と呼ばれます。
昔は気付かれてなかったのね。だから、化学流産は「〇回流産した」という数には入らないんです。だけど、今はわかってしまうのでカウントする人も多いですが、本来は数に入りません。
- 胎嚢が確認された後に、胎嚢が育たないということを3回繰り返すと、「流産」と言われ、治療しましょうとなります。それには保険が効きます。
「流産」は、胎嚢が確認されてからを言うんです。
- なぜ3回かというと、2回までは普通にあるからです。
赤ちゃんの心拍は、5週後半から6週で確認されます。
心拍が確認された後に止まった場合、これは医学的には流産とは言いません。「子宮外胎児死亡」という病名になります。
胎児がもう確認されてるから。
- 「胎嚢」から「胎児」への変化は、心拍が確認されることが判断ポイントです。
- 赤ちゃんは卵黄嚢から栄養をもらって発育します。
流産になりやすい人はその卵黄嚢が確認できないことが多いです。
これが確認できるようになると、高確率で赤ちゃんができるようになります。
- 5週4日目あたりで卵黄嚢が見えない場合は、排卵が遅れているか流産かという感じ。
卵黄嚢は、普通はきれいな丸に見えるんですけど、流産しやすい人は、見えた感じが丸じゃない。三角形っぽかったり、縁がガタガタしたりしている印象。これだとちょっと心配。
- ただ、胎児が育っても縁が丸じゃない人もいるんです。こういう人は、骨盤の歪みを治すと丸になります。
- 堀江
- それはなぜ?
- 依子
- 血流が良くなるから。
- 堀江
- なるほど!血流大事!
◆不育症の原因は、ストレス?
- 依子
- 不育症については、一般採血の他に、
- 1.抗リン脂質抗体
- 2.抗核抗体
- 3.ループスアンチコアグラント
- 4.抗精子抗体
- 5.凝固異常
- などの検査方法があります。
有名なのは、抗リン脂質抗体。抗精子抗体は男女ともに測るものです。
- 依子
- 凝固異常は、血栓ができやすい状態を確認します。
この検査に引っかかる人は、肺血栓や脳血栓ができやすいということです。
そういう人には、抗凝固薬を使うんです。結局はアスピリン。飲むか注射するかというところです。
- ただ、抗体はやっかいで、脱水でデータが狂いやすいし、日によって抗体の値が違うんです。
- 堀江
- そんなに変動する?
- 依子
- 変動するよ。「やや陽性」みたいな場合は、違う日に検査すると数値が出なかったり。
すごく重要な項目っぽいのに、今までの生活スタイルで変わるわけですよ。
- 流産した瞬間に測るわけじゃないから、なかなかタイミングが難しいし、保険でやろうとしたら一回しかできないし。自費だったら何回でもできますけど、月2,3万円かかっちゃうし。
- だからこれで一回マイナスになっちゃうと、原因不明の不育症、というカテゴリーに入れられっちゃう。
違う日に測ったらまた値は変わるかもしれないんだけどね。
- 堀江
- 原因不明の不育症だからって、そういうこともあるんだね。
- 依子
- 原因不明の不育症でも、結局使う薬は抗凝固薬だからね。
病院の規模によって、保険が効く項目と効かない項目がある。
- 堀江
- そうなんだ!
- 依子
- 花粉症とかの抗体と同じ感じだよ。
- 堀江
- ふと思い出したのが、不育症の初期の方がおられたんですよ。検査をすることになって、不安だからってわざわざ東北からこっちまで来られて。検査の結果、原因がわからないって言われたのね。でもまだ調べたいって病院に伝えても、「治療は一緒だから」って言われちゃって。
- でも本人は不安なんですよね。自営業の方で、「同窓会でなんて言われるかわからない」という感じでずーっと不安な状態なの。
- だから、ねえ、もうやめようって。
鍼灸とかも行かなくていい、病院も行かなくていい、漢方も飲まなくていい、もう何もしないで、って伝えてカウンセリングもやめたんです。
- そしたら、自然妊娠されたんですよ!
原因不明の不育症って言われたのに。こういうことってよくあるよね?
- 依子
- あるある。
みんな悩むことにエネルギーを使いすぎてるからね。
- 堀江
- 本当にそう!
今は検査がいっぱいあるから、「検査をしないといけない」みたいになるんだよね。
検査をすると治療をしないといけないってなるでしょ。もう検査いらない!って思うよね。
- こういうのを知ると、検査すればいいってものじゃないなって思う。
- 依子
- 全国の不妊クリニックのホームページを全部読んで、「このクリニックにはこう書いてあった、あっちにはこう書いてあった」という人がいたりね。
色んなクリニックが開催する無料の説明会にも行って、行き過ぎて、結局どこに通えばいいかわからなくなっちゃったりする人も結構多いよ。
- だからそういう人には、「まずは家で寝ようか」って伝えるよ。
「携帯の電源切って、冷蔵庫とかに入れてみない? 部屋真っ暗にして、寝てみようか」みたいな(笑)
- 堀江
- 薬も出されるけど、結局原因はストレスだったりするからね。
- 依子
- 抗凝固薬ですらプラセボになるんですよ。
「これ飲み始めたから大丈夫」って。飲んだだけで妊娠したりするからね。
- 堀江
- あるある。本当にある。
- 依子
- じゃあこれって、いつまで飲むの?ってなるんだよね。
- 堀江
- でもさ、こんな話は不妊クリニックとかでは絶対しないじゃん。こういうことを知った上で判断するのは大事だよね。
- 依子
- 不育症とか流産に関しては、一回の検査で判断しちゃうから。決まっても決まらなくても治療は一緒なんだけどね。
繰り返し測ってくれるところは少ないし、やめるタイミングもドクター判断で違ったりするので、患者さんは不安になりやすいよね。
◆脱水と過多月経について
- 依子
- 普段、みなさんが摂る水分は、水・お湯・お茶・コーヒーなどからだと思うんですけど、お茶とコーヒーはカフェインの有無に関係なく、利尿作用があります。
尿を排出しやすくする作用です。
- 採尿してくださいと言って渡される紙コップの容量は200ml。1回にそれだけ出るとすると、一日の排尿回数が6~7回だとして、日に1200~1400mlは体外に排出されることになります。
体から出ていく水分は、汗や便からでも出ていきます。皮膚から蒸発している分もあります。
- 一日に摂っている水分が500ml〜1リットルだとすると、食事からの水分摂取が多少あったとしても、数値だけ見ると単純にマイナスじゃないですか。
- 堀江
- そうだね。
- 依子
- そのくらいのマイナスバランスがあるとして、「水分が足りない」という状態を体は脱水とみなします。これが、生理が起きてない日のことです。
- 生理の出血量は、3〜7日で20~140mlが正常値、と教科書には書かれていて、この量はノンケミカルの昼用ナプキン2枚あれば足りる量です。
夜用ナプキンは、大きさによりますけど140~300mlは吸収できるので、それでも漏れる人は完全に「過多月経」です。
- 過多月経は(生理時の出血が)150ml以上のことね。
お産の時の出血量は、正常量が100~300ml。500mlを超えたらドクターコールです。輸血とか救急車で搬送を考えるレベルです。
- 出産の時って、子宮が36cmくらいまで大きくなっていて、1分間に1リットルの血液が赤ちゃんに送られているので、赤ちゃんが出て胎盤も出たときの傷ついた(子宮内の)面積で考えると、このくらい出血するのは当たり前かなと思います。
- だけど通常の子宮は、鶏の卵のLサイズくらいの大きさだし、ここから150ml以上出血するのと、36cmの子宮口から出るのとでは全く印象が違うじゃないですか。
過多月経の人は、出産時の子宮と同じ量の出血をしてるということです。
- 堀江
- それってすごい量だよね!
- 依子
- そう。卵を割ったって50~60mlしか出ないのにね。
しかも、お産の出血量には羊水を含むけど、生理の時は羊水は含まないから。全身をめぐる血液量が、子宮から出ます。
- お客さま
- どうしてそんなに出血するんですか?
- 依子
- 体が冷えているからです。
※参考記事
〈医師監修〉過多月経は普通じゃない【自分で治す婦人科講座「子宮の病気、子宮の働きを学ぶ」前編】
- 依子
- たくさん出血してるからって治療が必要かって言われたら、その人が不快に思わない限り治療はしないんです。
病気というカテゴリーには入りません。
- 治療ということになると、西洋医学での薬はピルしかないんです。だけど妊娠を希望してる人はピルを飲めないから、過多月経ならば、生理期間はさらに脱水状態になります。血液も水分だから。それが体の中から出るということは、補わない限りは脱水ということになるんです。
- 生理痛のある人は、痛み止めを飲んだりしますけど、痛み止めは解熱剤なので、さらに体が冷えます。
過多月経の人がロキソニンなどを飲むと、寒くなったりします。
- 堀江
- 初潮から過多月経だったのなら、日々慢性的な脱水だよね。
- 依子
- 食事の時にどれだけ噛んでるか、腸がどれだけ吸収できるかの状態にもよるけどね。
- 脱水の状態だと、皮膚の乾燥はもちろん、内臓も乾燥して、筋肉がきしみます。
腸も動きが悪くなる。子宮の筋肉も乾燥するので、それが原因で痛みが増す場合はあります。
◆卵管水腫と着床率の関係
- 依子
- 不育症の検査で採血がありますが、体外受精や顕微授精をする時は、必ず理由があるはずなんですよ。
旦那さんの精子の数が少ないとか、受精・着床してるかわからないとか。
- 卵管の中に液体がたまることで腫れてしまう「卵管水腫」という状態があるんですけど、これが起きる原因は、卵管の通過障害です。
クラミジアの手術による癒着、子宮内膜症の癒着などによって通過障害が起きてるんです。
- あとは、タンポンを使うことで子宮内膜が逆流して、内膜のゴミがたまる場合。
大抵は癒着が原因なんですけど、卵管水腫の腫れ具合も日によって違います。卵管が完全に閉塞することは珍しいので。
- 堀江
- そうなの?
- 依子
- (卵管が)完全に閉塞してたら、中の分泌液が日に日に増えるはずだから、それだとどっかで必ず破裂するのね。
破裂しないということは、かろうじてどっかから液が出ているはずだから、日によって腫れ具合が変わってくるの。
- 卵管水腫は、オペで取った方が着床率は上がります。
さっきも言ったように、子宮内膜にめりこんだ精子は、卵管水腫の水がザーッと流れて来た時に、精子も流れちゃう可能性があるから。
- 受精卵を子宮内に戻す時に、腫れがないかの確認をしてから戻さないと着床しにくいし、繰り返し流産になるし、不育症って診断されてもおかしくないです。
- 卵管水腫のチェックは一度された方がいいかと思います。
水がたまっていればエコーでわかりますし、なければ卵管造影、卵管通水検査をすると結果が明確になります。
- 着床率を考えるのであれば、簡単な手術ですし、卵管水腫は取っておいた方がいいと思います。
◆産婦人科医 駒形依子先生プロフィール
山形県内の高校卒業後
H13年東京女子医科大学入学
H20年米沢市立病院入職
H24年東京女子医科大学病院産婦人科入局
H26年東京女子医科大学東洋医学研究所入局
H28年からフリーランスで活動
H30年1月こまがた医院開業