基礎体温をつければ、妊活のタイミングがつかみやすくなるうえ、自身の体調変化にいち早く気づくことが出来ます。
手軽に出来る妊活法として取り組む人も多い基礎体温ですが、高温期が短く不安定であることで「妊娠出来ないのでは…」と不安に思う人も少なくありません。
そこで、不妊・婦人科疾患を治す基礎体温の見方の4回目として「高温期が短くなる原因と改善方法」について、詳しく解説していきます。
東洋医学の観点から行う体質改善方法では、妊娠しやすい体を目指すことが可能です。
まずは「基礎体温からわかること」と「基礎体温の正しい測り方」から、おさらいしていきましょう。
基礎体温の基礎知識について、正しく測って自分の体の状態を知ろう
基礎体温とは、「人の身体が必要最低限の活動を行っているときの温度」です。
男性とは異なり、女性の基礎体温は、女性ホルモンにより変化します。
基礎体温が低い時期を「低温期」基礎体温が高い時期を「高温期」といい、この2つの期間から、おおよその排卵日や生理日を予測することが可能です。
基礎体温の正しい測り方
基礎体温を測る際に使用する「基礎体温計」は、通常の体温計とは異なり、小数点第二位まで計測できます。
そのため、室温、汗、測る時間、衣服の着込み具合といった、さまざまな影響により正しく測れないことも少なくありません。
基礎体温を測る時は、計測の方法や環境に注意して以下の手順で行いましょう。
1.朝起きてすぐに測る
基本的には、毎朝同じ時刻に起きて測ります。
目覚まし時計と体温計は手の届く位置に置いて、布団から起き上がらずに測りましょう。
2.基礎体温計を舌の根の裏に入れて測る
基礎体温は口の中で測ります。
この時、口を開けたり口で息をすると体温が変化するので、呼吸は鼻から行ってください。
3.計測中は動かずにリラックスする
先にお伝えしたとおり、基礎体温とは「最低限の活動を行っているときの体温」です。
計測しながら立ち上がったり、頭で複雑なことを考えたりしては正確に測れません。
計測中は、また眠りにつくぐらいの気持ちでリラックスして測りましょう。
夜間勤務で生活のリズムが乱れる人は、朝の計測がむずかしい場合もあるかと思います。
その際は、同一時刻にこだわらなくても構いません。
出来るだけ起床後すぐに同じ状態で計測します。
また、睡眠時間が短いと正確に測れないといった話を聞くこともありますが、医学的な根拠はありません。
「不規則な仕事についているから」「睡眠時間が短いから」と基礎体温を測るのを諦めずに、できる範囲で毎日測ってみましょう。
基礎体温からわかること
正しく基礎体温表をつけていれば、次の4つのことが予測できます。
1.生理日の予測
生理周期が比較的規則的である人は、基礎体温表で次回の生理予定日がわかります。
生理周期が28日型の人は、生理開始後からおよそ14日間が低温期です。
その後、排卵日を境に14日前後の高温期に入り、ふたたび低温期へ入る時に生理が開始します。
基礎体温表を毎日つけていれば、おおよその体のリズムがわかるため、生理日の予測は簡単です。
体調や精神状態は、生理前・生理後・排卵期といった期間により大きく変化します。
生理周期を知れば、日々のスケジュールや妊活の予定を立てるのにも役立ちます。
生理後~排卵期
体調や精神状態がよく、勉強やスポーツなどの活動をするのにおすすめの時期です。ダイエットや髪染めを行うのもこの時期が適していますよ。
排卵期
排卵期は妊娠可能な時期です。
妊娠を望まれる人は、妊活のスケジュールをたてましょう。
排卵日前後には、排卵痛や排卵出血、体調不良が見られることもあります。
ストレスを溜めずにリラックスして過ごしましょう。
生理前
生理前はPMS症状(月経前症候群)により、情緒が不安定になったり体の不調が起こりやすい時期です。
この時期には無理をせずに休養をとりましょう。
PMS症状の改善には、野菜や果物に含まれるビタミン・ミネラルを多くとるのが効果的です。
2.排卵しているか
基礎体温では、排卵が行われているかを知ることができます。
排卵が行われていると言えるのは、高温期と低温期がはっきり2層に分かれた基礎体温表です。
排卵後は、卵巣に残った卵胞が黄体となってホルモンを出します。
この黄体ホルモンが着床を助けるために体温を上昇させ(高温期)妊娠が成立しなければ、生理とともにふたたび体温は下降する(低温期)のです。
3.排卵期の予測
排卵は、低温期から高温期にうつるタイミングで起こります。
基礎体温が上がりはじめて「1~3日前後」が、排卵日にあたることが多いようです。
基礎体温を測り0,3℃~0,4℃の差が出れば、その時期に排卵があると考えられます。
また、高温期はおおよそ12~16日ほど続くため、次の生理予定日の12~16日前を「排卵期」と予測することも出来ます。
排卵期が近づいてくる頃に、排卵検査薬を使うと高い確率で排卵日の予測が可能です。
4.妊娠の可能性
基礎体温でわかることとして有名なのが、妊娠の可能性を予測できることです。
基礎体温を見て、高温期が17日以上で生理が遅れているのであれば、妊娠初期の可能性が考えられます。
基礎体温は妊娠4ヶ月頃からまた下降しはじめ、妊娠5ヶ月には妊娠前の低温期の体温に戻ります。
高温期が短くなる原因を詳しく解説!基礎体温の形の乱れは3タイプ
通常、基礎体温表とは、低温期と高温期が2層に分かれた形になります。
生理が28日周期であれば、低温期と高温期の期間はそれぞれ半分ずつの14日前後です。
低温期と高温期の温度差が0.3℃以上あれば、正常に排卵が行われていると考えてよいでしょう。
しかし、高温期が短かったり低温期と高温期のバランスが安定しなければ、治療や体質改善が必要です。
とくに高温期が短い場合について、詳しく見ていきましょう。
高温期は着床する環境を整えている時期
高温期というのは、体温が高くなる時期です。
そもそも高温期に体温が高くなるのには理由があります。
卵子は卵胞という袋の中で低温期に大きくなって、排卵のときに飛び出します。その抜け殻が卵子が飛び出たときの出血の衝撃で黄体に変化するのですが、この黄体からはプロゲステロン(黄体ホルモン)が分泌されます。
高温期はプロゲステロンによって体温が上昇し、子宮内膜がフカフカになり、受精卵が着床できる環境が整えられます。
このプロゲステロンが十分に分泌されているかどうかを判断するのが、36.7度という体温なのです。
基礎体温表をみると36.7度の線が太くなっていたり、赤くなっていたりと目印がついているかと思いますが、それは、高温期は36.7度という体温を超えることが重要だからです。
黄体から出るプロゲステロンの量に比例して、体温は上昇します。分泌される量が少ないと十分に体温が上がりません。つまり、高温期が36.7度を下回っているということは、プロゲステロンの量が不足して、着床するための環境が整えられていないということを意味しています。
ただし、ここで注意してほしいのは、低温期が36.5度を超えるような全体的に体温が高めのひとです。低温期と高温期の差が0.3度以上ないと十分なホルモン量が出ていない可能性があります。低温期の体温が高い場合、高温期の体温の目安は36.7度ではなく、低温期の体温+0.3度を目安にしてください。
高温期の期間中は体温が36.7度を超えて続いていることが大切です。途中で36.7度をガクンと大きく下回ってしまう場合は、黄体の力が不安定でプロゲステロンの分泌量が減っている可能性があります。そのとき1回だけとかであれば、体温の測定ミスやたまたまということもありますが、毎周期体温が途中で下がる場合は注意しましょう。
体温の高さだけでなく、期間も見ていきましょう。
高温期の期間は9日以上必要です。一般的に妊娠しなければ黄体の寿命は最大で14日間です。14日間を超えるようであれば妊娠している可能性が非常に高くなります。
高温期が9日未満しか続かない場合は、黄体の力が弱いことが考えられます。黄体から出るプロゲステロンは妊娠の継続にとっても重要なので、着床するための環境が整えられないだけでなく、せっかく着床しても継続しにくい原因にもなってしまいます。
高温期が安定しなかったり、期間が短い場合、西洋医学的には、
・黄体機能不全
・卵巣機能低下
などが考えられます。
高温期の力が弱い場合は、ホルモン剤(内服薬:ルトラール、プラノバール、膣座薬:ルティナス、注射薬:hCG など)によって人工的にサポートすることができます。
また、血流を改善するための治療として、ビタミンCやビタミンやDの服用を行うこともあります。
黄体機能不全とは
黄体機能不全症とは、排卵したあとに黄体ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)が充分に出ず、子宮内で着床の準備が不完全な状態になることです。
黄体ホルモンの分泌が不充分になる原因はさまざまで、高プロラクチン血症といった病気で黄体が成熟しない、卵を育成させる作用が充分行われないといった卵胞期の異常があげられます。
その一方で、ホルモンの分泌が正常に行われていても、ホルモンの作用が働く子宮内膜自体の血流が悪かったり、レセプター(ホルモンの働きを受けとる細胞機能のこと)の異常で、黄体機能不全になることもあります。
黄体機能不全の人の高温期が短くなるのは、黄体ホルモンが少なく、高温期を長く維持することができないからです。
黄体機能不全は不妊症の原因となり、妊娠が出来ても早産や流産にかる確率があがるため、不妊基本検査でも必須の検査です。
黄体機能不全の病院での診断は、
①基礎体温の高温相が12日未満
基礎体温表での高温期が12日未満であり、低温層や高温層の差が0,3℃以下の場合、高温期の体温変化の有無などから、診断出来ます。
排卵後の高温期の5~7日目で血中プロゲステロンの値が10ng/mlに満たなければ、黄体機能不全症と診断されます。
ホルモン値が正常な場合は、子宮内膜日付診と言って高温期の5~7日目に子宮内膜を採取する検査を行います。
着床できる準備が整っている内膜か否かを調べることで、黄体機能不全の診断が可能
ただし、プロゲステロンの分泌には波があるため、血液検査だけでは判断がしにくく、近年はそれだけでは診断が難しいとされるようになってきています。
高温期は低温期の結果である
よい高温期になるかどうかは、卵胞の質とよい排卵かどうかに左右されます。
よい卵胞が育っていれば、よい黄体に変化し、しっかりとプロゲステロンを分泌してくれるからです。
また、せっかく良い卵胞が育っても排卵がスムーズでないと、よい黄体に変化することができません。
高温期になってから体の状態を気をつけたり、神経質になったりする方が多いですが、それよりも、低温期〜排卵にかけての状態を整えてあげることがはるかに重要です。
高温期が短い以外にも注意したい基礎体温表の乱れ
1.高温期が長い
高温期が長く続く場合は、妊娠初期の可能性があります。
生理予定日の一週間後に検査薬を使っても妊娠反応が出ない場合は、ストレスによるホルモンバランスの乱れや治療が必要な病気の可能性もあるので、病院を受診しましょう。
2.体温の変化がほとんどない
高温期、低温期の温度差がほとんど見られずに一定の体温をたもっている場合は、無排卵月経の可能性があります。
排卵が行われていないので、体温の変化は起こりません。
毎月生理のような出血(破綻出血)はあるために、基礎体温をつけていなくては気づけないことも多くあります。
3.基礎体温がバラバラで不規則
基礎体温に規則性が見られない場合のよくある原因のひとつが、体温が正確に測れていないことです。
しかし、基礎体温の測り方に気を付けていてもバラバラと体温が乱れる場合は、まれに無排卵月経の可能性もあります。
東洋医学的な体質改善法
基礎体温がしめすパターンからは、いくつかの体質的な背景を読み取ることができます。全員が全員そうであると言い切れませんが、そうである傾向が高いのです。
あてはまる場合には、そこを切り口にいまの状況を打破できる可能性も高いからこそ、自分の体質をしっかりとみてほしいのです。
1)気血不足
新陳代謝や元気のエネルギーである「気」
血液、栄養、ホルモンのすべてをまとめた「血」
その両方が不足してしまった状態が気血不足です。気は血とともに全身を巡るので血流不足と考えてもらって差し支えありません。
気はエネルギーであり、人間の体の活動を支えてくれていますが、この気が不足するために全身の働きが低下します。特に、婦人科ではホルモンの力強さも意味しているので、気が足りない場合には、女性ホルモンの変化が弱まり、基礎体温がはっきり二層に分かれなくなる傾向があります。
漢方でいう血は、ホルモンのはたらきも指しています。つまり、血の不足はそのままホルモン不足に直結するのです。また、子宮は血の海という言葉が示すように、血がたっぷりあってはじめて子宮・卵巣系のはたらきが正常に行われます。そのため、血が不足すると卵巣機能の低下=弱い黄体に直結してしまうのです。
2)脾腎陽虚
脾とは胃腸の働き、腎とは生命力、若々しさや生殖力を意味します。そして、陽は体をあたため活発にするエネルギーであり、高温期を支える力です。
脾腎陽虚とは、胃腸と生殖力が弱り、体を温める力が低下した状態です。初期老化のサインでもあり、足腰の弱りや腰回りの冷えがでている場合には、その体質が強まっていることを示しているので、注意が必要です。
低温期を陰、高温期を陽と漢方では捉え、排卵時期に陰から陽に転換することを陰陽転化といいます。ここでは陰の力が強ければ、陰の力が転換して同じように強い陽の力となることを示しています。
脾(胃腸)と腎(生命力)の力がしっかりとしていないと、この陰陽転化=排卵もスムーズに行きにくくなります。よい排卵が行われることではじめて、卵胞からよい黄体ができ、高温期が安定するのです。
気血不足、脾腎陽虚がある場合は、まず体の土台をつくっているのは脾(胃腸)のちからを立て直すことから始めましょう。
体はすべて食べたもので出来上がっています。
気と血は、脾(胃腸)で生み出され、全身をめぐります。胃腸の弱りは、気血不足の直接の原因となるのです。現代の胃腸の弱りの多くは、食べ過ぎに原因があります。痩せていたり、食欲がある場合でも、食べ過ぎによる胃腸の弱りが隠れていることが多いのです。
時間が来たから食事をするということではなく、
空腹になってから、食べる。
ということを徹底してください。空腹になると胃腸は元々備わった掃除機能を発揮し、掃除がはじまります。おなかがグゥゥとなるのが合図です。
おなかが鳴るのは、
「おなかがすいたよ〜」と言っているのではなく、「いま掃除中だから食べないで〜」の合図なのです。
同時に気と血の原料となる食材も積極的に食べましょう。鶏肉を筆頭に肉・魚のタンパク質、豆類・イモ類、玄米、海藻、ほうれん草・小松菜、牡蠣(カキ)・しじみといった貝類などです。
また、陽虚というのは温める力が弱っている状態なので、生姜やシナモンといった体をあたためる食材を取ることも有効です。
体を温めることもおすすめです。脾腎陽虚では、腰回りの冷えが強いことも多いので下半身を重点的にあたためましょう。布ナプキン、おまたカイロ、レッグウォーマーを使うのも良いですし、おへその下と仙骨の両方にカイロを当てるカイロサンドイッチで子宮・卵巣系を前後から温めることをおすすめしています。
もうひとつ、低温期の力を高めることで高温期を整えるという意味では、睡眠に気をつけましょう。低温期を支える陰は夜に養われます。つまり十分な睡眠が取れるようになると、低温期によい影響を与えるのです。良い睡眠とは、朝スッキリと起きれる睡眠のことです。
朝スッキリと起きれる睡眠のためには、やはりまとまった睡眠時間が欠かせません。23時までに寝れるように心がけてみてください。どのくらいの睡眠時間が適切かは個人差もありますので一概に言えませんが、起きた時にスッキリ起きれないのは、自分にとって睡眠不足であるというサインです。自分自身の適切な睡眠時間をまずはたっぷり寝るということころが探っていきましょう。
食事の改善と温めること。
シンプルなことのようですが、基本的なことこそ大切なのです。
体というのは、手をかけてあげると必ず応えてくれます。まずは自分でできる改善に取り組んでみる。それでもうまくいかなかったら、薬膳茶や漢方など、自然の力を積極的に利用した体質改善にチャレンジしてみてください。
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<出典・参照元>
丘の上のお医者さん 基礎体温からわかること
日本産婦人科医会排卵があるとなぜ基礎体温が低温期と高温期の二層性を示すのですか
日本産科婦人科学会編著 女と男のディクショナリー44~45ページ
国立国会図書館デジタルコレクション 黄体機能不全の診断と治療