不妊・婦人科疾患を治す基礎体温の見方第3回目は、低温期が長く、高温期が短いタイプの基礎体温表について見ていきましょう。
低温期は卵子が成熟する期間である
低温期は何をしている時期でしょうか?
そのことがわかると
とても理解しやすくなります。
低温期というのは卵子が成熟していく期間です。
精子と出会って受精できるように
いい卵子を育てていく期間なのです。
低温期の長さは、
あなたの体が卵胞を育てるのにかかる時間を意味しています。
もしも、
20日を超えて長くかかるようなら
育てる力が弱ってしまっている可能性が高くなります。
育てる力が弱いので
日数がかかってしまうのです。
低温期が長いということは、卵胞がなかなか育たないことを意味しています。
西洋医学的には、
・卵巣の老化のサインであるFSHの値が高い
・多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)がある
・高プロラクチン血症
などが考えられます。
育てる力が弱い場合、西洋医学的なホルモン治療で、卵胞を育てる力を人工的にサポートすることも可能です。
しかし、ひとによってはホルモン剤を使ってもなかなか卵胞が育たない、あるいは体外受精にチャレンジした時に採卵ができなかったり、たとえ採卵できたとしても、よい受精卵が得られないという場合もあるでしょう。こういった場合は、根本的に体質を改善していく必要があります。
低温期が長く、高温期も短い場合こそ注意して
低温期が長い方は同時に高温期を見てみましょう。
たとえ低温期が長くても高温期が36.7度以上あって9日以上続いている場合は、決して悪い状況ではありません。時間がかかっていても卵胞はしっかり育って、よい卵子が作られている可能性は少なくないからです。
しかし、低温期が長く同時に高温期が9日未満の場合は、要注意です。体が持つ着床する力も低下しているので、体外受精などをしてもよい結果につながりにくいのです。
この場合は、体質を根本的に整えていきましょう。
体質を変えることで、基礎体温の形も変わっていきます。
低温期が長く高温期が短いひとのための、東洋医学的な体質改善法
基礎体温がしめすパターンからは、いくつかの体質的な背景を読み取ることができます。全員が全員そうであると言い切りはしませんが、そうである傾向が高いのです。
あてはまる場合は、そこを切り口にいまの状況を打破できる可能性も高いからこそ、自分の体質をしかりとみてほしいのです。
1)肝腎不足
低温期が長く高温期が短い場合、その背景には、肝腎不足(かんじんふそく)と呼ばれる体質がある場合が少なくありません。
これは、血流の不足と、生殖のちからの衰えを意味しています。
それだけではありません。
この肝腎不足という体質は、生命力そのものが弱っている状態でもあるのです・・・。妊娠するためにはもちろん、元気な赤ちゃんを育てる明るいお母さんになるためにも、絶対に改善してほしい体質なのです。(特に、食べても太れない体質の方は気をつけてください)
なぜ、血流不足と生殖の力が弱ってしまうのでしょう?
漢方でいう「血」とは、血液、栄養、ホルモンをすべて含んだ言葉であり、「気」とは、新陳代謝や元気のエネルギーを意味しています。
そして血流とは、気と血の流れです。
この気と血は、胃腸でつくられます。
食べたものから、ひとの体を作っている肉体も、ひとの体を動かすエネルギーも作られているからです。その食べものを消化吸収する場である胃腸が弱ってくると、血流不足になります。
「生殖のちから」というのは、精力が強いということなのですが、精力とは男性にだけ使う言葉ではありません。女性にもあてはまります。この精の力というのは、生まれ持った力であり、生まれつきの体の強さや弱さに関係しています。
生まれつきだから仕方がないわけではありません。さきほどの胃腸でつくられる気と血によって、この精力をサポートして強化することができます。
しかし、胃腸が弱っていると精力=生殖のちからが弱いままになってしまうのです。
2)痰湿阻滞
血流不足と精力不足を引き起こす胃腸の弱りは、もうひとつ非常にやっかいな問題を引き起こします。それが、痰湿阻滞(たんしつそたい)です。
痰湿というのは、体にたまった悪いもの・ヘドロだと思ってもらうとわかりやすいでしょう。痰湿阻滞というのは、体にたまった悪いもの・ヘドロが内蔵の機能を低下させ全身のめぐりをわるくした状態なのです。
体のコンディションがよければ、こういったヘドロはたまりません。常に体は悪いものを排泄する働きが備わっていて、体内の状態をきれいに保ってくれているからです。
ではなぜ、悪いものがたまってしまうのでしょう。
それは、体に備わっているデトックス機能が働かなくなってしまったからです。人体にとって最大のデトックス機能は、ズバリ「うんち」です。うんちによって毎日、毎日、不要なものが排出されています。
しかし、胃腸が弱ると、スムーズな排便ができなくなります。毎日うんちがでているからといって、決して安心はできません。うんちが水に浮かぶかどうかが運命の分かれ道です。
浮かばないうんちは失格です。体内に痰湿がたまっている可能性が一気に高まります。
この(1)肝腎不足、(2)痰湿阻滞はお互いに関連しあっています。根底には共通して胃腸の弱りがあるからです。
改善のためには、まず胃腸を元気にしましょう。
STOP食べ過ぎが、胃腸を元気にする鍵を握っています。
食べ過ぎの自覚がないひとも増えています。
胃腸が弱っているというと食欲がない状態を想像しますが、それだけではありません。ストレス食いなどで、自分が必要とする以上に食べていて、隠れ胃腸虚弱になっている場合もあるからです。
・本当の空腹を感じていない
・食べたい衝動で食べている
・ごはんは満腹まで食べる
・晩ごはんの時間が20時以降
・時間だから、おなかがすいてなくても食べる
・朝ごはんがほしくない
・間食がやめれない
低温期が長く、上記の項目にあてはまる方は確実に胃腸が弱り、肝腎不足、痰湿阻滞の体質になっています。
ぜひ、おなかをすかせて美味しくごはんを食べてください。
そして、食物繊維をたっぷり取って、水に浮かぶうんちを目指してください。
それが、低温期が長く、高温期が短い方に最初に取り組んでほしい体質を改善する方法です。低温期が長いから全員が全員、肝腎不足や痰湿阻滞があるわけではありませんが、やはりその傾向が高いのです。
ただ、治療をしていて、なかなかうまく行かなかったり、いまの状況が悪くても諦める必要も、自分を責める必要も全くありません。体質というのは、「いま」のあなたの状態を示しているに過ぎないからです。
体は変わります。
自分自身に手をかけたぶんだけ体は応えてくれます。これまで多くの方の体質を見てきましたが、体質を変えるチャンスは、誰にでもあります。そして、そこには体質がそうなる理由があるからこそ、原因から向き合うことで体質は変えることができるのです。
妊娠力を高めていきましょう。
※胃腸がよわっている状態の改善については弊著「血流がすべて整う食べ方」に詳しく書いています。ぜひご一読ください。
漢方薬剤師 堀江昭佳
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