生理はホルモンバランスによって毎月規則正しく起こります。しかし、心やからだに何らかの問題が発生すると変化が表れることがあります。

「生理が遅れている」

「不正出血をした」

「下腹部痛がひどい」

などといった症状に、婦人科疾患が隠れていないか心配になる女性は多いのではないしょうか。また、病気が隠れているにもかかわらず、からだからのSOSに気づかない場合もあるかと思います。

そこで今回は、

・生理関係の婦人科疾患

・妊娠初期症状

・妊娠の妨げとなる婦人科疾患

・命に関わる危険性のある婦人科疾患

・年齢とともに増える婦人科疾患

について、婦人科疾患をまとめてご紹介したいと思います。

 

生理関係の婦人科疾患

体調不良やナプキンの取りかえなど、わずらわしさを感じることもある生理。

しかし、生理は心身の不調を教えてくれる、健康のバロメーターでもあります。
「いつもの生理と違う」というだけでなく、「いつも生理痛がひどい」「いつも生理不順」といった『いつもと同じ』ことに病気が隠れているかもしれません。
その症状を放置していると、不妊症に繋がることもあるので注意していただきたいと思います。

 

生理不順

一般的な生理は、

・生理周期：25～38日

・生理期間：3～7日間

・経血量：20～140ml

このように、日本産科婦人科学会で定義されています。一般的な生理の定義から外れている場合は、生理不順と診断されます。

『少しはみ出しているだけ』『生理不順でも体調不良は感じない』と自己判断するのは危険です。その生理不順には、無排卵周期症・黄体機能不全・多嚢胞性卵巣症候群（PCOS）といった、不妊症の原因となる病気が隠れているかもしれません。

◯生理不順の詳しい記事はこちらからどうぞ
不妊症との関係は？知っておきたい生理不順のあれこれ

 

生理痛

生理の時に痛みがあるのは、血を外に出すために子宮が収縮することが主な原因です。
そして、生理の時期によって痛みの原因も様々です。

・生理前：生理1～2週間前に起こる月経前症候群（PMS）。女性ホルモンの分泌量が急激に増えるため、自律神経のバランスが崩れて起こる痛み。

・生理前半：生理痛のない女性に比べて、子宮を収縮させる物質が多いために起こる痛み。

・生理後半：血行不良が原因で起こる痛み。

このように、多少の生理痛があるのは普通ですが、日常生活に支障が出るほどの痛みは”月経困難症”といって、治療の対象となるので確認しておきましょう。

 

・器質性月経困難症

子宮内膜症や子宮筋腫、クラミジア感染などの病気が原因となり生理痛が起こっている可能性があります。
生理3日目以降も痛みが続いたり、生理以外でも痛みを感じる場合は、このような病気がかくれている場合があります。これらの病気については、次の項目で詳しくご紹介しています。

 

・機能性月経困難症

病気ではなく、子宮を収縮させる物質が多い人に起こります。その他にもストレスや冷え症、思春期に多い卵巣や子宮の未成熟によっても生理痛が酷くなることがあります。

生理痛は我慢するのではなく、鎮静剤や病気の治療を行うことで軽減することができます。『若いから大丈夫』ということはないので、まずは生理痛の原因を検査しておくことをおすすめします。

 

不正出血

生理以外で出血することを不正出血といいます。
妊娠による出血、疲れや排卵時の”中間期出血”といった病気ではない場合と、病気が隠れている場合があります。

◯不正出血の詳しい記事はこちら

生理じゃないのに出血したら？不正出血の原因と婦人科診察の流れ

 

妊娠初期症状と子宮外妊娠

妊娠初期症状と生理前の症状は似ている場合があります。症状だけで判断することは難しいのですが、妊娠に気づいた時の症状をご紹介したいと思います。

1位：微熱　32.1％

2位：ニオイに過敏になる　27.8％

3位：眠気　26.7％

4位：胃痛・胸やけ　23.5％

5位：胸や乳首の違和感　22.7％

 

多くの女性が、生理予定日の1週間後（妊娠5週目）にこのような症状を感じたようです。風邪や生理前に似た症状を感じた女性も少なくないので、妊娠の有無をできるだけ早く確認したい場合は、生理日に検査できる早期妊娠検査薬も販売されています。

妊娠の有無をできるだけ早く確認しておくことは、子宮外妊娠（異所性妊娠）の可能性を早期に発見するためにも重要です。

市販の妊娠検査薬で判断することはできないので、妊娠がわかった場合はすぐに産婦人科を受診してください。

 

妊娠の妨げとなる婦人科疾患

子宮筋腫

良性の筋腫が子宮内にできる病気です。
できる場所によって痛みや症状が異なりますが、一般的に生理の出血が多い・貧血・生理痛などの症状があります。
着床障害、子宮内の血流悪化、精子の進入の妨げとなることから不妊の原因にもなります。また、妊娠中も流産や早産の危険性があるので、年齢や筋腫の大きさを考慮して治療方法を選択する必要があります。

◯子宮筋腫の詳しい記事はこちら

はじめてさんの不妊治療の教科書 その⑫ 不妊症と子宮筋腫のおはなし

 

子宮内膜症

子宮内膜が子宮以外にもできる病気で、性交痛・排便痛・生理時以外の痛みなどの症状があります。排卵障害や着床障害にも関係することから、子宮内膜症の約30％の女性が不妊症だと言われています。

◯子宮内膜症についての記事はこちら

つらい子宮の痛みは子宮内膜症？症状や治療法、妊娠の可能性について

 

性器クラミジア感染症

性交渉以外でも感染することがあるので、

・性器が腫れる

・性器が痒い

・排尿時に痛みを感じる

・尿に血や膿が混じる

・オリモノの臭い、量、状態が変わった

このような異変を感じた場合は、産婦人科や泌尿器科を受診するようにしてください。

感染症による炎症を放置していると、卵管が細くなったり癒着することで不妊の原因になります。不妊症の検査項目にも入っているので、恥ずかしがらずに検査を受けてほしいと思います。

◯性感染症についての詳しい記事はこちら

オリモノが臭う原因は膣内細菌の増加？！流産・早産の危険もある細菌性膣症

 

命に関わる危険性のある婦人科疾患

子宮頸がん

子宮がんの7割を占める、性交渉から感染するがんです。ほとんどの女性が感染経験があると言われていますが、90％が免疫力で自然に排除されます。そのうちの10％が子宮頸がんに進行してしまうのです。早期の自覚症状はほとんどないので、最低でも2年に1度のがん検診を受けて下さい。

 

子宮体がん

女性ホルモンと深い関わりのある、子宮で発生するがんです。子宮内膜増殖症から発生することが知られています。最も多い自覚症状は『不正出血』。特に、女性ホルモンの変動が大きい高齢女性は注意が必要です。

 

卵巣腫瘍

卵巣の大きさは2～3cm程度ですが、腫瘍が発生することで30cmまで大きくなることがある病気です。腫瘍が小さい場合は自覚症状がほとんどありませんが、大きくなるとお腹の張り、下腹部痛、頻尿などの症状があります。

◯腫瘍関係の詳しい記事はこちらからどうぞ

産婦人科の定期検診は妊活への近道！～子宮の腫瘍について徹底解説〜

 

年齢とともに増える婦人科疾患

更年期障害

閉経前5年から閉経後の5年の期間を『更年期』といいます。この時期は女性ホルモンが低下していくので、更年期障害として心とからだに様々な影響を及ぼします。

・血管の拡張による症状
ほてり、のぼせ、ホットフラッシュ、発汗など

・身体症状
めまい、動悸、頭痛、関節の痛み、しびれなど

・精神症状
気分の落ち込み、意欲低下、イライラ、不眠など

早い人で40歳前半に閉経を迎える場合もあるので、妊娠を希望されている方は血液検査でホルモンの数値を測っておくことをおすすめします。

 

性器脱

子宮を支える骨盤底筋が緩むことで、子宮が下がったり出てきてしまっている状態です。加齢以外にも、出産経験がある、下半身の筋肉が少ない、重いものを持つことが多いなど、骨盤底筋が緩みやすい人も注意が必要です。

◯性器脱の詳しい記事はこちらからどうぞ

陰部から何かが出そうな違和感は子宮下垂や子宮脱｜骨盤底筋トレーニングで予防しよう

 

【まとめ】

婦人科疾患は生理と女性ホルモンが大きなポイントとなります。生理の異常やホルモンバランスの乱れは、からだからのSOSかもしれません。将来妊娠を希望した時に、婦人科疾患が原因で不妊症とならないためにも、若いうちからからだの声に耳を傾けていただきたいとも思います。

＜出典・参照元＞

生理痛の仕組ー日本新薬株式会社

妊娠初期症状ー日刊工業新聞

婦人科の病気ー日本産科婦人科学会

性感染症ー日本産婦人科医会