妊娠前~妊娠中のカフェインとの上手な付き合い方

  • 不妊治療・婦人科

妊娠前や妊娠中は「あれをしては駄目なのではないか?」「これは影響があるのではないか?」など、心配事がたくさんあるかと思います。そのなかでもよく耳にする「カフェイン」は、コーヒーや紅茶などに含まれている身近な存在です。

「妊娠中には摂らない方がよい」「カフェインは妊活中に影響する」などと言われることもありますが、実際は本当に影響するのでしようか?


結論から申し上げますと、カフェインは適度な量を心がければ妊娠前や妊娠中でも問題ありません。

そこで今回は、カフェインとは何か?なぜカフェインが一般的に控えた方がよいといわれているのか?カフェインの適度な量とはどのくらいなのか?等、このような疑問にお答えし、妊娠を希望されている方、現在妊娠されている方がカフェインと上手に付き合っていく方法をお伝えしていきます。

 

そもそもカフェインってなに?その効果は?

カフェインとはアルカロイドという化合物で、コーヒーや紅茶・ココアやコーラといった飲み物に含まれています。

効果としては、中枢神経を刺激し、眠気覚ましなどの興奮作用、尿の量を増加させる利尿作用などがあります。そのため、朝起きて目を覚ますためにコーヒーや紅茶を飲んだり、仕事の途中に気分をリフレッシュさせるため、また、集中力をアップさせるためにお茶をするという方は多くいらっしゃると思います。

このようなメリットがあるカフェインですが、摂りすぎてしまうと、様々なデメリットを引き起こします。

例えば、中枢神経系の刺激が過剰になり、めまいや動悸・ふるえや不安感などといった症状が出てきます。胃腸に作用すると、下痢や吐き気を起こすこともあります。また、メリットとしてあげた「目をすっきりさせる覚醒作用」があるということは、夜寝る前に飲むことで不眠につながると考えられます。

 

カフェインは妊娠に影響するの?

それでは、なぜカフェインは妊娠前や妊娠中に影響すると言われているのでしょう。

1980年、アメリカ食品医薬品局の研究で、カフェインの過剰摂取で流産率が上昇するという報告があったことが、妊娠中のカフェイン摂取を控える動きのきっかけとなりました。

また、コーヒーの摂取量が多いほどAMH:抗ミュラー管ホルモン(女性の卵巣の予備能を知るための指数と言われる指数)が低くなるという報告や、男性のコーヒー摂取が多いほど、妊娠後の流産に影響するという報告があります。

その一方で、妊娠中に適量カフェインを摂取するだけでは流産率は上昇しないという報告や、カフェインの摂取は排卵障害や卵胞発育障害に影響しないというデータもあります。また、男性のカフェイン摂取は精子の運動率に影響を与えない、もしくは運動率を上昇させる、といった報告もみられ、まだまだカフェインの影響は明確になっていません。

しかし、このような研究のほとんどはカフェインの「過剰摂取」によって影響が出るという報告であり、適量のカフェインであれば妊娠前、妊娠中に悪影響を及ぼすとは言い切れません。

コーヒーや紅茶を飲む際には砂糖やクリームを加える方もいる他、コーラなどのカフェインを含む清涼飲料には砂糖や添加物も多く含まれているため、これらの飲み物を摂ることでカフェインのみが影響を及ぼしているとは言い切れません。
また、カフェインが直接的に影響を及ぼすわけではなく、就寝前のカフェインの大量摂取で睡眠の質が低下し、その影響で全身状態が悪くなるということも考えられます。

 

どのくらいカフェインをとってもいいの?

では、どの程度のカフェインが適量と言えるのでしょうか。

日本を含め、国際的にも、カフェインを一生摂取しても健康に影響が生じないと推定される量について、具体的なデータはありません。

しかし、例えば、イギリスの英国食品基準庁では、妊娠した女性に対して1日あたりのカフェイン摂取量を200mgとしています。

そして、カナダ保健省では通常の成人で400mg、妊婦や授乳中の女性、妊娠を予定している女性では1日300mgとしています。また、WHO(世界保健機関)は2001年、カフェインの胎児への影響はまだ確定していないとしながらも、妊娠中のコーヒーを1日3~4杯にすることを呼びかけています。

これらを考えていくと、目安としては200~300mgのカフェインを目安としていくとよいでしょう。

 

飲み物にはどのくらいカフェインが含まれているの? 

カフェインが含まれている飲み物はコーヒーや紅茶、煎茶などがあります。それぞれの飲み物に含まれているカフェインの量を見てみましょう。

コーヒー 60mg/100ml 

・紅茶 30mg/100ml

・煎茶 20mg/100ml

・ウーロン茶 20mg/100ml

・ほうじ茶 20mg/100ml

・エナジードリンク 25~300mg/100ml


このように、種類によってカフェインの量はバラバラです。

普段よく飲まれている飲み物のカフェイン量を参考にしてみてください。
また、エナジードリンクには1本50mlに150mgなど、カフェインが大量に入っているものもあるため、気づかないうちにカフェインを大量摂取している可能性があります。
注意してください。

 

カップ1杯の目安は?

1日何杯という基準があっても、「1杯」の容量はカップによって異なります。

例えば、

・マグカップの容量は通常200~300ml

・コーヒーカップでは120ml

・お店によってばらつきはありますが、コーヒーショップなどの小さいカップで240ml

と、なります。

 

普段使用しているカップの大きさによりますが、コーヒーを飲む1日量で考えると、大きいカップで大体1杯程度、小さめのカップであれば4杯程度が目安といえます。

これに加え、就寝前のカフェインを控えるようにすると、日中のブレイクタイムに飲む機会が集中するので、1日1~4杯で十分コーヒーや紅茶を楽しむことができるでしょう。

 

ノンカフェインにはどのようなものがあるの?

なかには、普段から何杯も飲む方もいらっしゃるかと思います。そのような方は、1日のうちの何杯かをノンカフェインの飲み物に変えていくとよいでしょう。

ノンカフェインは、カフェインが含まれていない飲み物のことを言います。ルイボスティー、ハーブティーやタンポポコーヒーなどがあります。

デカフェやカフェインレスのコーヒーは厳密にいうとごくわずかにカフェインが含まれていますが、通常のコーヒーよりもカフェインを減らした状態のものをいいます。

 

・タンポポコーヒー 

 タンポポの根を使用したお茶で、カフェインが含まれていません。風味がコーヒーに似ており、妊婦さんやお産後のプレゼントとしてもよく使われています。

・ルイボスティー 

 抗酸化作用があり、体の老化やアンチエイジングによいとされています。また、便秘解消にも効果があるとされており、女性にはうれしい効果があります。

・ハーブティー 

ローズヒップティーやハイビスカスティにはビタミンCが含まれているため女性に不足しがちな栄養を摂ることができます。

・デカフェ・カフェインレスコーヒー 

 コーヒー豆の状態からカフェインを減らした物のことです。コーヒーショップでも、カフェインレスのコーヒーを扱っているところは多くありますので、普段の味に近いものが楽しめるかと思います。

 これら温かいお茶を飲むことで冷えの改善も期待できるため、ご自身のリラックスできる香りや味を組み合わせながら楽しみながら取り入れていければ良いと思います。

まとめ

このように、1~4杯/日のカフェインであれば妊娠前や妊娠中でも問題なくカフェインの含まれた飲み物を楽しむことができます。

大事なのは「ご自身が一番リラックスできる」と言うことになりますので、もし、カフェインを摂ると悪いのではないかと過剰に心配になってしまうのであれば、代わりとなるノンカフェインの飲み物を利用したり、飲みたいけれど体に悪いのではないかと我慢して辛く感じてしまうのであれば、適量内で楽しむように心がけましょう。

普段のライフスタイルを大幅に変えてしまうとストレスが溜まってしまいますので、可能な限り無理のない範囲でカフェインと付き合っていくようにしてください。

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<出典・参照元>

全日本コーヒー協会

NIKKEI STYLE カフェインが気になる コーヒーは1日何杯までOK?

妊娠しやすい食生活 ハーバード大学調査に基づく妊娠に近づく自然な方法
ジョージ・E・チャヴァロ

「赤ちゃんが欲しい」2019 夏 主婦の友社

日本生殖医療学会雑誌 Vol.63 No.3 August 2018
O-281 「嗜好品の妊孕性への影響:カフェイン摂取による卵胞発育障害と卵子の質の低下」

Coffee and caffeine intake and male infertility: a systematic review.

厚生労働省  食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A
~カフェインの過剰摂取に注意しましょう~

文部科学省  日本食品標準成分表(七訂)

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