婦人科外来でもっとも多い症状が「不正出血(不正性器出血)」です。
生理以外の思わぬ出血は「もしかして何かの病気?」と不安になるとともに、すぐに病院に行くべきか・少し様子を見てよいものか判断に迷うことがあります。
今回は、不正出血が起きる原因・受診のタイミング・診察の流れについて説明します。
不正出血の原因は?
不正出血とは、通常の生理以外に起こる性器からの出血の総称です。
その原因はさまざまで、おおまかに下の図のように区別されます。
婦人科では「女性を見たら妊娠していると思え」と言われるほど、まず妊娠の有無をはっきりさせることから診察がスタートします。
妊娠反応検査を行い、
- 妊娠反応(+)→妊娠にともなう出血の原因を探ります。
- 妊娠反応(ー)→性器からの出血か、性器外(痔・膀胱・尿道など)からの出血かを鑑別します。
性器からの出血の場合、器質性出血(子宮や卵巣の病気によるもの)か、機能性出血(ホルモンの分泌や排卵が関係して起こる出血)かを判断するため診察・検査を進めます。
年齢によって出血の原因は予測できる
不正出血は、思春期・成熟期・更年期・老年期の各年代ごとに特徴があり、原因をある程度予測することができます。
ここでは、主に成熟期・更年期・老年期に多い不正出血をまとめました。
◎排卵期出血
生理と生理の間に見られる不正出血で、「中間期出血」とも呼ばれます。
排卵期の一時的なエストロゲン分泌低下によるもので、出血は少量かつ一過性です。
様子を見ても問題ないことがほとんどですが、量が多く繰り返し出血するような場合はホルモン療法を行うこともあります。
◎破綻出血
無排卵や、加齢によるホルモン分泌のアンバランスが原因で起こる不正出血です。
この状態ではプロゲステロンが分泌されず、エストロゲンだけがダラダラと分泌を続けます。そのため子宮内膜は増殖期から分泌期へ変化することができず、肥厚した子宮内膜が維持できなくなり(破綻)、生理様の出血として体外に排出されます。
◎婦人科系のがん
20代になると、子宮頸がんの発症率が高くなります。子宮頸がんは無症状のことが多く、不正出血に気付いたときには病気が進行している場合もあります。
また、40代では卵巣がん、更年期以降は子宮体がん・子宮頸がんの発症率が高くなるため不正出血を見過ごさないことが大切です。
◎異所性妊娠
異所性妊娠に気付かず卵管などで赤ちゃんが成長してしまうと、大出血を起こして命に関わることがあります。
更年期はホルモン分泌の低下によって機能性出血がもっとも多くなり、同時に子宮体がんや子宮頸がんなど器質性の病気が増える年代です。
不正出血に気付いても「更年期で生理が不規則になっているせいだろう」と勘違いし、重大な病気の発見が遅れることもあります。
また、肝臓・血液・内分泌の病気や服薬中の薬が不正出血の原因になることもあるため、一概に年齢だけでは判断できません。
このように、各年代ごとの特徴はあるものの不正出血の原因は多様です。容易に自己判断せず、いつもと違う出血を認めた場合は早めに受診することをおすすめします。
不正出血は早めの受診を!検査・診察の流れ
不正出血でとくに重篤なものは、異所性妊娠や婦人科系のがんです。
体が発する異常サインであることも多いため、不正出血に気付いたらなるべく早く受診することが大切です。
しかし、診察や検査に対する不安から「婦人科に行くのは気後れしてしまう……」という女性も多いはず。
ここからは、診察のおおまかな流れと内診を受ける際のポイント説明します。
「病院でどんなことを聞かれるか・どんな検査をするか」を知っておくことは心構えになりますし、伝えるべき症状・聞いておきたいこと・不安に思っていることを事前に整理しておくとよいでしょう。
◎妊娠の有無を確認
- 最終月経(何月何日から何日間?)
- 妊娠に伴う症状の有無
- 尿検査
◎出血部位の確認
- 外陰部の診察
- 内診(膣鏡、経膣超音波検査)
◎器質的異常の有無
- 出血時期・出血量(いつから?どんなときに出血する?出血量はどれくらい?)
- 普段の生理の様子(生理周期、日数、量、生理痛の有無)
- 出血以外の症状(お腹の痛み・張り感、性交時痛など)
- 外陰部の診察、内診、画像検査(超音波検査、レントゲンなど)
◎薬剤性・出血傾向の有無
- 服薬の状況(抗凝固剤、ホルモン剤など)
- 現在治療中の病気
また、診察を受ける上でとくに抵抗を感じるのが内診ではないでしょうか。
はじめての方はもちろん、何度受けても緊張するという方は少なくありませんが、ちょっとした工夫で内診を乗り切ることができます。いくつかポイントをご紹介しましょう。
内診を受けるときのポイント
- なるべくリラックスして下半身の力を抜きましょう。緊張して体に力が入ると痛みを感じやすくなります。
- 下半身を冷やさないようにしましょう。寒さを感じると体に力が入りますので、お腹と太ももが隠れるスカートを履いたり、バスタオルをかける、長めの靴下やレッグウォーマーを持参するなどの工夫をしてください。
- 膣鏡を入れるタイミングに合わせて、ゆっくり深呼吸をしましょう。鼻から吸って口から「フーーー」っとゆっくり吐き、下半身の力を抜くように意識します。
- 痛みや緊張で腰が浮いたり、上半身をよじってしまうこともあると思いますが、なるべく内診台から腰を浮かさず、おへそを天井の向きに保ったほうが器具が挿入しやすく、痛みを感じません。
【まとめ】
不正出血を認めたら、ためらわずに病院へ行きましょう。
「もしかして悪い病気?」と不安な日々を過ごすより、早めに診察を受けて原因を突きとめ、適切な治療を受けたほうが良いのは明らかです。
何も異常がなければラッキーですし、「病気かもしれない」という不安からも解消されます。
また、各年代で起こりやすい女性特有の病気もありますから、症状がなくても年に一度は婦人科検診を受けることをおすすめします。
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堀江昭佳Twitter
<出典・参照元>
病気がみえるvol.9 婦人科・乳腺外科(メディックメディア)