梅雨が過ぎれば、暑い夏はすぐそこ。
今年は梅雨入り前から暑い日が続き、夏を迎えるのが憂鬱……という方も多いのではないでしょうか。
夏といえば熱中症や夏バテが心配ですが、意外と多いのが「夏の冷え症」です。
冷えは万病のもと。「たかが冷え症」とあなどってはいけません。
今回は「夏の冷え性」をテーマに、体への影響や対策まで具体的にお伝えします。
夏なのに冷え症?いえいえ、夏こそ冷え症に注意です!
夏といえばかき氷に冷やしそうめん、お風呂上がりの冷たいビールが美味しい季節ですね。キンキンに冷えた飲食物は暑い夏ならではの楽しみである一方、体を急激に冷やし、習慣的に摂ることで冷え症を招く原因となります。
つまり、冷たいものがお店にたくさん並ぶ夏こそ、冷え症に注意が必要なのです。
これほど温暖化が進んでいなかった時代は、網戸にして扇風機を回し、うちわを扇ぎながらスイカをかじって暑さをしのぐことも可能でした。
しかし、現代の異常な暑さでは熱中症の恐怖から朝から晩まで冷房をつけ、オフィスやショッピングモールは冷えすぎて寒いほどです。
とくに、女性は男性に比べて筋肉の量が少なく、熱を作り出す力が弱いため冷え症になりやすい傾向にあります。
冷え症を軽く考えると体のあちこちが不調に見舞われることになるため、漢方でも「冷え対策」はとくに重視しています。
ちなみに、「冷え性」は冷えやすい体質、「冷え症」は冷えによって起こる症状をさします。ここからは、体の冷えが引き起こすさまざまなトラブル、「冷え症」についてお話していきます。
冷えが招く「体の不調」とは?
薄着に冷房、冷たい食べ物……夏の冷え症は、体の外側だけでなく内側(内臓)からも冷えるのが特徴です。
冷えが原因となる体の不調にはどんなものがあるかというと、思いつくだけでもこれだけあります。
- 胃腸や卵巣・子宮が冷やされ、胃腸虚弱・生理不順・不妊症などのトラブルにつながる
- 冷えによって自律神経のバランスを乱し、いつも体がだるい・不眠・頭痛・イライラするなどの不調を招く
- 体温が下がると免疫力も下がるので、風邪をひきやすく病気にかかりやすい
- 代謝が落ちることで肥満・便秘・むくみなどの症状が出る
さらに、体が冷えると血の巡りが悪くなり、血の巡りが悪くなると冷え症が助長されるという負のループに陥ってしまします。
漢方では「血の巡り」こそが体を正常に保つ基本だと考えるので、体を冷やして血行不良になるというのは大問題です。
漢方で診る「冷え」の原因
西洋医学には「冷え症」という病名がなく、有効な治療法はありません。
しかし、自律神経失調症・貧血・低血圧・腰痛・肩こり・慢性疲労など、冷え性(冷えやすい体質)が原因となる症状は多くあります。
西洋医学は、病気に着目して原因を取り除く根治療法や、症状を一時的に抑えこむ対症療法は得意ですが、体質や生活習慣といった「根本的な問題」を改善するのはあまり得意ではありません。
一方、漢方はその人の体質を見極め、生活を見直し、「根本的な原因を改善する」「体質から変えていく」という治療が得意です。
冷え症に対する治療も同様で、冷えの原因を取り除くとともに、なぜ体が冷えやすいのか。どうすれば冷えが改善するかを「その人の体質」に合わせて治療していきます。
漢方における「冷えやすい体質」には、次のようなものがあります。
◎気虚(ききょ)
気虚体質は、熱と血が不足しています。このタイプの方に多いのが「胃腸虚弱」で、食べたものを消化・吸収できず、熱や血を作り出すことができません。
熱が不足すれば体が温まらないのはもちろん、血が不足しても全身に熱を運ぶことができず、結果として冷えやすい体質になってしまいます。
◎気滞・瘀血(きたい・おけつ)
気滞・瘀血体質の方は、全身の血の巡りが悪くなっている状態です。
血の巡りが悪いと、熱が運ばれず全身の冷えを招きます。
◎水毒(すいどく)
体の中の水分が過剰となり、水分が溜まることで冷えが生じます。
水分を摂りすぎて胃の中がポチャポチャになると、胃が冷えるだけでなく胃酸も薄まり、消化機能が落ちます。消化機能が落ちると胃の痛み・ムカつきとなって、食欲低下につながります。
夏の冷え症や夏バテはまさにこの状態で、過剰な水分摂取によって冷えや胃腸虚弱を引き起こしているのです。
「腎」と「冷え」の関係
冷えは体調不良だけでなく、エイジングにも深く関わっています。
漢方でいう「腎」は、生殖能力・ホルモンバランスの調整・免疫機能・骨代謝を司り、とくに老いと若さをコントロールしています。
その腎の大敵が「冷え」です。
体を冷やさず、腎に負担をかけない生活習慣を心がけることで、いつまでも若々しくハツラツとした「若さ」を保つことができます。
この「若さ」とは、潤いのある肌・艶のある髪の毛など見た目の問題だけでなく、卵巣の働きや妊娠力といった直接目には見えない部分も含みます。
体を冷やさないことは、「若さを保ち、妊娠しやすい体をつくる」ということでもあるのです。
足が冷えている人は、子宮・卵巣も冷えている
左右の足には内・外腸骨静脈という血管が走っていて、これらの静脈は骨盤にある総腸骨静脈で合流します。
総腸骨静脈の近くには卵巣・子宮があり、冷やされた血液が総腸骨静脈を流れることで卵巣・子宮を冷やしてしまうのです。
漢方では卵巣・子宮を「血の海」と呼ぶほど、血を豊富に必要とする臓器です。また、他の臓器と同様に冷やされた状態では正常に働くことができません。
妊活中の方はとくに、足元を冷やさない(卵巣・子宮を冷やさない)ように気をつけてください。
今日からできる!冷えない体づくり
冷え性(症)は、普段の生活習慣を見直すことで改善できます。
冷えを改善する方法で難しいことはひとつもありません。ちょっとした心がけでできるものばかりですので、できることから始めてみましょう。
◎体の外側からできること
- 夏でも薄着はNG、冷房対策のストールや羽織を用意する
- 夏でも腹巻き(通気性の良いものを使用)
- 靴下、レッグウォーマーで足元の冷え対策
- 夏でもゆっくりと湯船につかる
◎体の内側から改善したいこと
- 夏でも常温、もしくは温かい飲み物・食べ物を摂る
- 適度な運動で筋力・代謝をアップする
- バランスのよ食事を心がける。糖質は体を冷やしやすいので摂り過ぎに注意!
冷え症対策のポイントは、足・腰を冷やさないことです。
そして、夏場でも常温もしくは温かい飲み物や食べ物を選んで、体の内側から冷えを予防しましょう。
また、血の巡りを良くすることも大切です。
筋肉の少ない女性や長時間のデスクワークという方は下半身に血液が滞りやすいため、第二の心臓といわれる「ふくらはぎ」を鍛えるのがおすすめです。
両足を肩幅にひらき、かかとを上げる・下げる運動を10回×2〜3セット行ってみてください。むくみ予防にもなりますよ。
【まとめ】
「冷えは万病のもと」とは、本当に核心をついた言葉です。
病院に行くほどではないちょっとした不調、エイジング、不妊……。
女性を悩ませるさまざまなトラブルの根本は、「冷え」にあるといっても過言ではありません。
今年も暑い夏・冷えやすい夏がやってきます。屋外では熱中症対策、屋内や普段の生活では冷え症対策をしっかりと行って、過酷な夏を乗り切りましょう。
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堀江昭佳Twitter
<出典・参照元>
「いつもなんか不調」がすっと消える手当て(猪越英明 著 サンマーク出版)