普段から基礎体温をつけていると、生理周期や基礎体温のアンバランスに
気づくことがあります。
たとえば、「高温期なのに生理がきた」「生理がきた後も高温期が続いている」
というケースがそうです。
正常な生理周期であれば、排卵から約2週間後にプロゲステロン(黄体ホルモン)の
量が減って低温期となり、生理がきます。
しかし、「生理なのに高温期」という状態はこの正常なパターンとは異なるため、
「なにか異常があるのでは?」と不安を抱く方が多いのです。
これは生理? 不正出血? それとも妊娠?
今回は、この疑問にお答えします。
まず、理想的な基礎体温を理解しておきましょう
基礎体温(妊娠していない場合)では、
- 生理開始から14日前後の低温期を経て排卵
- 排卵後、1〜2日で体温が上がって高温期に入り、高温期が12〜14日続く
- 体温がストンと下がって低温期に入り、生理がやってくる
このように、くっきりと2層に分かれているのが理想です。
低温期の間、卵胞は静かに成熟し、排卵すると一気に高温期に入ります。
体温が上がるのは、排卵によって破れた卵胞が黄体に変化して、
プロゲステロン(黄体ホルモン)を分泌しているためです。
妊娠すればそのまま高温期が続き、妊娠していない場合は、プロゲステロンが
減少することで体温がスッと下がり、次の卵胞を育てる準備に入ります。
子宮内膜は剥がれ落ち、新たな子宮内膜に生まれ変わります。
(子宮内膜の剥脱・再生)
そして、また卵胞が成熟したら排卵して……というのを繰り返しているのです。
つまり、
①卵胞の発育(低温期)
②排卵
③黄体の維持(高温期)
④子宮内膜の剝脱・再生(低温期になり生理がくる) →①に戻る
この①〜④のサイクルを約1ヶ月ごとに繰り返していて、
これを「月経(生理)周期」といいます。
なお、生理周期には個人差があるので、
- 生理初日〜次回の生理がくる前日までの期間が25〜38日
- 毎月の生理周期の誤差が6日以内
この範囲であれば、正常な生理周期となります。
基礎体温は、体の様子を正直に映し出す
低温期に入って生理がくるのが普通ですが、たまにこのサイクルが乱れ、
「高温期なのに生理がきた」ということが起こります。
生理周期は女性ホルモンによって調整されていて、このホルモンバランスは
自律神経の影響を受けやすく、環境の変化やストレスですぐに変調をきたします。
ですから、多少の誤差は珍しくありません。
「いつもより早く(遅く)生理がきた」というのは、誰でも経験があると思います。
しかし、
- 明らかに高温期が短かく(10日以下)、生理になる
- 高温期が上がったり下がったり安定しないまま生理になる
- 高温期のまま生理が始まり、その後もずっと高温期が続く
このような場合は、治療が必要な場合もありますので注意が必要です。
基礎体温は女性の体の状態を反映しています。
「あれ? いつもと違う」という気づきが、外からは見えない体の中のトラブルを
見つけるきっかけになるのです。
さらに、低温期になって生理がくるのは、「次の卵胞を育てる準備に入る」ことを
意味しています。
しっかりと卵胞を育てるためには、十分な低温期が必要なのです。
「高温期のまま生理」という状態は、卵胞の発育にとっても、
よい環境とはいえません。
「高温期のまま生理」で考えられるトラブル
高温期に変調があるときに考えられるトラブルとして、
- 黄体機能不全
- 体内の炎症によるもの …があります。
黄体機能不全
高温期が短く、上がったり下がったりと不安定なまま生理になる場合は、
「黄体機能不全」を疑います。
排卵後の体温上昇はプロゲステロン(黄体ホルモン)によるものなので、
高温期が短かい・不安定という状態は、プロゲステロンが不足している証拠です。
ほかにも、子宮内膜をフカフカにして着床しやすくする、妊娠を継続させる作用が
あるため、黄体が働いていないと不妊症や流産の原因になります。
体内の炎症によるもの
代表的なものに、子宮内膜症があります。
子宮内膜症の組織から分泌される炎症性物質によって、体は慢性的な炎症状態となり、体温が下がりにくくなることがあります。
また、トラブルではありませんが、ホルモン剤を使用していると
体温が下がりきらないことがあります。
漢方的視点からみた、高体温と生理の関係
高温期が終わり、ストーンと低温期に下がるのが理想ですが、「ダラダラと下がる」「下がりきっていないのに生理がくる」という場合、
- 陰虚(蓄えて育てる力の不足)
- 血虚(栄養・ホルモンの不足)
- 気虚・陽虚(エネルギーの不足・温める力の不足)
……このような状態が考えられます。
つまり、
- 卵胞を育てる力が弱い→しっかりした黄体が作られない
- 栄養・ホルモンの不足→卵巣・子宮の働きが弱くなる、ホルモンバランスの変調
- エネルギー不足→黄体の力が弱く、高温期を維持できない
……ということです。
高温期が不安定・生理のタイミングが早いという状態は、ホルモンバランスの変調や、卵胞の発育不全からくる黄体機能不全を考えます。
どのような対応をすればいい?
まれに、正常妊娠の場合でも生理の予定日から数日間続く出血(月経様出血)が
見られることがあります。
「生理がきても高温期が続く」という場合、まずは妊娠検査薬で妊娠の可能性がないか確認してみましょう。
高温期に「予定日通りに生理がきた」と考えて、検査をせずに妊娠の可能性を
見逃すのはとても危険です。
そして、妊娠検査が陰性であっても、
- 高温期が続く
- 生理周期のたびに高温期が不安定(2〜3ヶ月続けて)
……という場合には、一度病院で診てもらうことをおすすめします。
ホルモン療法が原因の場合は、治療を中止することで体温上昇は落ち着きます。
しかし、黄体機能不全や子宮内膜症は、適切な治療をしなければ不妊症の原因と
なりますので注意が必要です。
黄体機能不全・子宮内膜症ともに、状態が改善することで基礎体温や生理の変調も
正常に戻ってきます。
漢方治療としては、育てる力である「腎・陰」を補うこと、血や気をつくる土台である「脾(胃腸)」の養生が大切です。
高温期の不調については、こちらでも詳しく説明しているので
参考になさってください。
短く不安定な高温期を整えるには、低温期がカギである。〜不妊・婦人科疾患を治す基礎体温の見方 4〜
【まとめ】
基礎体温と生理の変調、それにまつわる体のトラブルについてのお話でした。
今回の「高温期で生理」のように、気づかないところでトラブルが起きているのに
見逃してしまうと、病気の悪化だけでなく不妊症につながることがあります。
逆に、不妊症で悩んでいる方が基礎体温をつけることで、黄体機能不全などの不調に
気づき、適切な対処によって妊娠できることもあります。
異変を見逃さず、トラブルに早く気づいて治療するために、
まずは自分の体を知ることが大切です。
そのためにも、普段からご自身の基礎体温と生理周期を知っておきましょう。
「あれ? いつもと違う」
この気づきこそ、女性の健康や、安全な妊娠・出産にとって非常に大切なことです。
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堀江昭佳Twitter
<出典・参照元>
神奈川県公式 丘の上のお医者さん 女性と男性のクリニック
「基礎体温からわかること」
生殖医療の必修知識2017 一般社団法人 日本生殖医学会編
まったなし!崖っぷち高齢不妊女性のための超スパルタ妊娠マニュアル
(峯村静恵 著)