冷え症は不妊になりやすい?冷え症克服のアドバイス

  • 不妊治療・婦人科

「いつも手足が冷えて困っている」と、冷え症に悩むベビ待ち女性は
少なくありません。冷え症が原因で妊娠しにくくなっているのでは、と
心配になる人も多いと思います。

冷え症があると、全身の血液の流れが悪くなり、
妊娠力の低下につながる可能性も0ではありません。

そこで今回は冷え症について、不妊との関係はあるのか。
また冷え症を改善するにはどうすればいいのかについて、解説します。

 

冷え症とは?どんな症状があるの?

そもそも冷え症とは、体の中心と手足先の温度の差が大きく、
たとえ暖かい環境のなかにいても手足先が冷たいままであることを指します。
そして時間が経っても、なかなか手足先の温度が上がらずに、
自分でも手足先が冷えていると自覚をしている状態をいいます。

多くの女性がこのような手足の冷えを実感しています。

冷え症になると手足先が冷えるだけでなく、血液の循環が悪いことから
疲れやすくなったり、全身のだるさを感じたり、さらに肩こりや頭痛なども
あらわれやすくなります。

冷え症が引き起こす症状としては、一例として以下のようなものが挙げられます。

  • マイナートラブル:腰痛、頭痛、便秘、肌荒れ、トイレが近くるなど
  • 免疫力の低下:風邪をひきやすくなるなど 
  • 妊娠・分娩時のトラブル:早産、出産時に出血が多くなるなど

このように冷え症であることで、さまざまな症状が引き起こされることがわかります。

 

冷え症を感じる女性はどのくらいいるの?

それでは実際のところ、どのくらいの女性が冷えを症状として
訴えているのでしょうか。

厚生労働省の「平成28年(2017年)国民生活基礎調査の概況」において、
性別・年齢別・症状別にみた有訴者率(人口1,000人に対してどのくらいの人が症状を訴えているのか)をみると「手足が冷える」という症状を訴える女性は32.7人でした。

年齢別にみてみると、20代は17.9人、30代は22.1人、40代は22.5人と比率は上がっていき、年齢を経るにつれて手足の冷えを訴える女性が多くなることが分かります。

ちなみに、女性の有訴者率では、肩こりが117.5人とトップで次が腰痛115.5人、
手足の関節が痛む70.2人、体がだるい53.9人などとなっています。

それらの訴えと比べて有訴者は少ないものの、決して見過ごせない症状であるといえるでしょう。

 

冷えの原因は?

これまでの研究や文献によると、冷えになる原因として大きく2つ、
①身体的なものと②環境によるものがあるとされています。

①身体的要因

 1.自律神経の不調

   全身の血液量が減り、手足先の血液の流れが悪くなる
   女性ホルモンが減り、ホルモンバランスが崩れるなど 

 2.陰陽バランスの乱れ

   気の不足(脾臓、腎臓、心臓)
   陽気(体をあたためる力)の不足
   気鬱(気の流れが滞る)
   お血(循環機能の低下)など

②環境要因

 1.生活環境の乱れ

    不規則な生活リズム
    運動・睡眠不足
    バランスの悪い食事、糖質の多い食事内容
    疲労蓄積やストレス

 2.低い外気温・冷房の使い過ぎなど

 

自律神経は内臓や血管の動きをコントロールして体内の環境を整える神経です。

このバランスが崩れると全身の機能に不調が及び、結果として血液のめぐりも
悪くなり、冷え症も生じるということが分かります。

さてここでベビ待ちカップルにとって気になるのは、冷え症が妊娠に影響するのか
ということです。冷え症と不妊の関係について、見ていきましょう。

 

冷え症と不妊との関係性

冷え症と不妊の関係についていえば、実は直接的な関係があるとはいえません。

やはり不妊は、女性の年齢や卵子の質の低下など別の原因によるところが大きく、
冷え症だからと行って妊娠率が大きく影響されることはないでしょう。

しかし先述のように、自律神経やホルモンバランスが崩れることによって、
全身を巡る血液の流れが滞り、さまざまな体の状態を引き起こすことが
間接的に不妊に影響する可能性があります。

血液の流れがスムーズでなくなると、
十分な栄養分やホルモンが体に行き渡りにくくなります。

すると、性機能に関わる子宮や卵巣にもそれらの栄養分やホルモンが十分に届かず、
不調を引き起こしたり、また月経不順や排卵の障害を起こしやすくなります。

妊娠中や出産時においては、冷え症があることで、マイナートラブルや早産、
陣痛が弱まるなどいろいろな弊害をもたらすことも指摘されています。

一方で、体を温めて冷え症が改善されると、全身の血液のめぐりがよくなり、
必要な栄養分やホルモンが全身のそれぞれの臓器に運ばれやすくなり、
卵巣や子宮などの生殖を司る機能も回復させる可能性が大きくなるといえます。

女性の冷えと不妊症の関係性について検討した調査によると、
冷え症があるかないかというよりも、冷え症の程度、強さなどが
不妊症に関連しているという報告もあります。

いずれにせよ、冷え症は、全身の自律神経の働きに影響があり、
それにより血液の循環やホルモンの流れを滞らせ、
子宮や卵巣にも影響を及ぼしかねません。

その結果として、妊娠しにくい体の状態になりやすくなることが、
お分かりいただけたと思います。

 

冷え症を改善し妊娠しやすい体を作るためには?冷え症対策

それでは最後に、妊娠しやすい体づくりのために、
冷え症にはどんな対策をとれば良いのでしょうか。

ここではおもに3つご紹介します。
一つ目は生活リズムを整えること、二つ目は環境や衣類を調整すること、
そして最後は東洋医学の力を借りるということです。

それぞれ説明していきますね。

 

【冷え症対策①】生活リズムを整える

早速ですが、みなさんは睡眠をどのくらいとっていますか?

中には習慣的に就寝時間が遅く、睡眠時間がとても短いという人もいるかと思います。しかし冷え症の原因ともなる自律神経の働きを整えるためには、睡眠時間を十分に
とることがとても大切です。

そして睡眠だけでなく、毎日の食事も冷たい飲み物、甘いもの、脂分が多いものなど
体を冷やしやすいものを避け、身体を温める食事を積極的にとる
工夫をしましょう。

質の良い睡眠のためには、日中の軽めの運動もお勧めです。

 

【冷え症対策②】環境や衣類を調整する

季節を問わずに、出来るだけ身体を冷やさない服装を心がけましょう。
とくに太い血管が流れる首元はいつも冷えないように、季節によってはストールや
マフラーなどでいつも温めておいて下さい。

そして冷え症の人がとくに冷たくなりやすい下半身や足先は、腹巻きや
レッグウォーマーでしっかりと保護し、血液の流れを良くするよう注意しましょう。

 

【冷え症対策③】東洋医学の力を借りる

東洋医学で冷え症は病気と捉えられています。それぞれの体質や冷え症の具合に
よって、適した漢方薬を処方してもらうことも一つの有効な方法です。

漢方では冷えは「気のめぐりを阻害し、血の停滞、水の停滞を招き「気・血・水」に
影響を及ぼす」と考えます。

これら症状に対応できる漢方は多くありますので、漢方の力も上手に借りながら、
妊娠しやすい体づくりを目指して下さい。

まとめ

西洋医学においては、冷え症と不妊の関係性に明確なエビデンスはありません。

しかし東洋医学では、冷え症を病気と捉えしっかりと対応するべき症状であると
考えています。

全身の血液の流れを整え冷え症を改善することは、健康的な生活の第一歩。

特に、これから赤ちゃんを望む女性にはぜひ取り組んで欲しい、
大切な考え方といえるでしょう。

 

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<出典・参照元>
「冷え症」の概念分析 日本看護科学会誌 Vol.30 No.1 2010

ニプロ株式会社 すこやかネット「軽く考えていませんか? 冷え症は1つの病気」

妊婦の冷え症と異常分娩との関係性  日本助産学会誌 27巻 1 号(2013)

厚生労働省 平成28年 国民生活基礎調査の概況 
「第10表  性・年齢階級・症状(複数回答)別にみた有訴者率(人口千対)」p.41

女性の冷え症状と不妊症状の関係について 全日本鍼灸学会雑誌 2016年66巻

疾患と漢方9.冷え症,虚弱体質,痛みの漢方療法 昭和医会 第64巻 第1号