生理と頭痛の関係 〜原因と対処法〜

  • 不妊治療・婦人科

毎月生理が近づくと、心身に不調を感じて憂鬱な気分になることはありませんか?

その中でも生理前後の頭痛は症状が長引きやすく、普段より痛みを強く感じる傾向に
あるため、生理のたびに悩まされる女性が多いようです。

今回は、そんな生理と頭痛の関係についてのお話です。原因や対策を知って、
不快な症状を吹き飛ばしましょう!

頭痛は圧倒的に女性に多い

頭痛にはいくつかのタイプがありますが、代表的な頭痛といえば次の2つです。

  • 緊張型頭痛:ストレスや、長時間のパソコン作業による筋肉の緊張・疲労によって起こる。頭の両側が締め付けられるように痛むのが特徴。
  • 片頭痛:セロトニンなどの神経伝達物質がうまく働かないことによって起こる。

頭の片側がズキズキと脈打つように痛み、ときに吐き気を伴うことも。

いずれのタイプも男性より女性に多く、とくに「片頭痛」に悩む人の数は
女性が男性の3.6倍、30〜40代女性の5人に1人が片頭痛持ちだというデータもあります。

このように、頭痛の中でもとりわけ女性に目立つ「片頭痛」と女性の体には、
何か深い関係ががありそうです。

生理のときに頭痛が起きるのはなぜ?

ある調査では、生理のある女性の2人に1人が「生理前後に頭痛を感じる」というデータが報告されており、いかに多くの女性が生理時の頭痛に悩まされているかがわかります。

それもそのはず、頭痛には女性ホルモンが強く影響していると考えられているのです。

女性の体は、生理周期に合わせて女性ホルモンの分泌量が変化し、
とくに生理前はエストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌量が急激に減少します。

エストロゲンが減少すると、それに連動するように
“幸せホルモン”と呼ばれるセロトニンの量も減少しますが、
このセロトニンが頭痛に深く関係しているというのが有力な説です。

セロトニンは脳内の神経伝達物質のひとつで、血管の収縮をコントロールしたり
痛みを抑える作用があります。

このセロトニンが減り脳内の血管が広がることや、普段より痛みを
感じやすくなっていることが片頭痛に関係しているというのが大方の意見ですが、
明確なメカニズムはいまだ結論が出ていません。

頭痛に対する一般的な対処法

片頭痛に対する一般的な治療法として、アセトアミノフェン、非ステロイド系抗炎症薬、エルゴタミン、トリプタン、制吐薬(吐き気止め)などの薬を使用する方法があります。これらの薬は、病院で診察を受け、片頭痛であると診断された場合に処方されます。

また、市販薬で同等の成分が配合された痛み止めを購入し、
対処しているという方もいるでしょう。

しかし、ほとんどの飲み薬は効果が現れるまでに15〜30分ほどを要します。
この数十分でさえ、頭痛で苦しんでいるときは長く感じるものです。

片頭痛は音・光などの刺激や体を動かすことで症状がひどくなるので、
痛み止めの効果が現れて症状が落ち着くまでは、暗くて静かな部屋で横になり、
リラックスして過ごすようにしましょう。

睡眠不足・ストレスも片頭痛を招くため、まずは体をゆっくりと休ませることが
大切です。

頭痛と生活習慣・ストレスの関係

ある研究では、「片頭痛患者の約60%がストレスを感じたときに頭痛が起こる」という
報告もされるほど、ストレスは片頭痛を引き起こす大きな要因のひとつです。

「生理中はイライラしやすい」と感じる女性は多いと思いますが、
このイライラの原因には体内の鉄不足が関係しています。

日本人女性はもともと鉄分が不足しているうえ、かぶせるように生理で血を失うわけですから、生理中は体にとって深刻な鉄不足になっていると考えた方がいいでしょう。

さらに、片頭痛の原因にセロトニンの減少が関係しているとお話ししましたが、
このセロトニンを作るためには鉄分が不可欠なのです。

生理前からセロトニンが減少しているところに、さらに鉄分も不足することで
セロトニンが作られず、負のサイクルに陥ってしまいます。
これが「生理中のイライラ」の原因です。

それ以外にも、糖質過多の食生活がストレスを招くことや、睡眠不足あるいは
睡眠過多といった睡眠時間の乱れ、赤ワイン・チョコレート・チーズに含まれる物質の
過剰摂取も片頭痛を起こしやすい
と報告されています。

質の良い睡眠とストレスを溜めないことは普段から大切ですが、
とくに生理中は生活のリズムに注意するとともに、
食生活でのちょっとした工夫が必要です。

具体的には、

  • 糖質の多いパン・パスタなどの炭水化物、お菓子の摂り過ぎに注意する
  • 良質なタンパク質と鉄分を含む牛肉や豚肉・赤身魚を意識して摂る  

まずは、これらの食生活を意識してみましょう。

質の良い睡眠を得るためには、就寝前に軽めの運動やストレッチを行うと、
リラックス効果と適度な疲労感を与えてくれるのでおすすめです。

頭痛と漢方

生理のときの頭痛は、持続時間が長いうえに薬が効きにくいという特徴があります。

さらに、不眠・ストレス・冷え・天候の悪化・血流障害などによって
痛みが強くなるため、症状や薬の効果だけにとらわれるのではなく、
環境や生活習慣にも目を向けることが大切です。

漢方は、病気や症状そのものをみる西洋医学とは異なり、
心身の不調で苦しんでいる人を取りまく環境や生活習慣・心の状態など、
広い視点から不調の根本的な原因を探っていく治療法です。

生理のときの頭痛で、西洋医学的な治療の効果がない・あるいは薬の副作用で
治療が続けられないという方は、漢方を試してはいかがでしょうか?

漢方治療について少し専門的な話をすると、
生理中の不調に対しては「気」と「血」の状態をとても重視します。

生命活動のエネルギーである「気」、血液だけでなく栄養やホルモンを含む「血」、
この2つは互いに影響し合い、どちらかが悪くなるともう一方も悪くなってしまう性質があるのです。

とくに生理中は、普段の生活よりも多くの「血」が失われるため
「気」の働きも悪くなりがちですが、「血」を作るためには「気」が欠かせません。

つまり、「気」と「血」の両方を補い、巡りを良くしてあげることが
とても大切なのです。

しかし、これは多すぎても少なすぎてもいけません。
その人にとっての適切なバランスを保つことが必要です。

漢方治療では、一人ひとりの体調・体質・生活習慣・心の状態などを丁寧に
カウンセリングし、その人にとって適切なバランスを見つけ、補うお手伝いをします。

頭痛に効果のある代表的な漢方薬

頭痛に対する代表的な漢方薬に「呉茱萸湯(ごしゅゆとう)」があります。
この漢方薬は「気」と「血」の巡りをよくする作用や、鎮痛作用があります。

同じように「桃核承気湯(とうかくじょうきとう)」という漢方薬も、
頭痛をはじめとした生理中の不快な症状を和らげる作用があります。

特に生理前、生理中、排卵期など生理周期の変化に合わせて出てくる頭痛に
おすすめなのが「頂調顆粒(ちょうちょうかりゅう)」です。
ビャクシ、センキュウ、キョウカツなど9種類の植物性生薬から構成され、
体力や体質にあまり関わらず使用できます。

また、続けて飲まなくても頭痛の出る時期に頓服的に使っても
即効性が期待できるのも特徴のひとつです。

ほかにも、「血」を補充して巡りをよくする「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」
などがあり、生理中の不調・頭痛に対する漢方治療は「気」と「血」に対する治療が
中心となっていることがお分りいただけると思います。

また、「五苓散(ごれいさん)」を併用することで、片頭痛に対する漢方薬の効果を
高めるという研究報告もあります。

  
【まとめ】

漢方薬はその場しのぎの対症療法とは異なり、食事や睡眠といった普段の生活を
整えることで「体質そのものを改善していくこと」を目的にしています。

頭痛でいえば、「気」と「血」の質やバランスを良くし、
全身にくまなく巡る体質にすることです。

漢方は、「気」や「血」などの要素は常に体の中を巡っており、体の状態は一定でなく
変化しているということを前提に治療します。

そしてまた、女性の体も生理周期に沿って常に変化しているため、
漢方と女性の体は非常に相性がいいのです。

ひどい頭痛に悩まされ、「すぐに痛みをなくしたい」というとき
西洋医学の薬は非常に有効です。

しかし、その場しのぎの対症療法ではなく、頭痛のメカニズムを理解し、
普段の生活から体や心の状態を整えてあげることが何より大切です。

これまでの生活習慣をいきなり変えることは大変なことですから、
まずは小さなことから始めてみましょう。

そして、漢方の力でお役に立てることがたくさんあります。

まずは、気軽にご相談ください。

 

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<出典・参照元>
慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト

日東医誌 Kampo Med Vol.68 No.1 34-39, 2017
呉茱萸湯で効果不十分な月経関連片頭痛患者に五苓散を月経周期に合わせて投与した症例の検討

慢性頭痛の診療ガイドライン 2013 日本神経学会・日本頭痛学会 監修
慢性頭痛の診療ガイドライン作成委員会 編集(医学書院)

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