「もう、ずいぶんと落ち着きました」
そう言うKさんの顔は、想像してたよりも、ずっと穏やかな表情だった。
「最初は、本当に、つらくて、つらくて・・・でも、やっと気持ちが落ち着いてきました。しあわせな思いをさせてもらえたなぁって」
40歳をすぎて、
体外受精に踏み切って、
ダメだったけど、
諦めずにチャレンジして、
そして、
ようやく陽性反応が出た。
でも、
心拍確認までいかなかった。
「もう、不妊治療の先生の方から、次回は、産科の先生に診てもらってくださいって、言われたところだったから、余計に悲しくて・・・。
妊娠したら、不安のほうが大きくて、たくさん心配してたけど。本当にうれしかったし、おなかに赤ちゃんが来たことで、今まで思わなかったことや感じなかったことをたくさん感じることができて、いい勉強させてもらえたなぁって思うんですよ。でも」
でも?
少し微笑んで、Kさんは続けられた。
「でも、どうせ、結果って一緒なんだから、
心配しても、しなくても結果は一緒だったかもしれないから、だったら、もっと喜んどけばよかったなぁ」
ぼくは、うまく言葉が出てこなかった。
「せっかくだったら、もっと、もっと喜んどけばよかったなぁって。あ、心配しないでくださいね。少し落ち着いてくると、いままで全く妊娠反応が出なかったのに、今回、授かれたのは、妊娠できるってことだし、いいことだと思うって、だんなとは話してて。」
落ち着いて、ていねいに言葉を選ばられるKさんになんだか安心する。
Kさん、言われる通り。はじめて出た妊娠反応は、「妊娠できるよ」って、教えてくれるサインでもあるから。
初期の流産のほとんどは、たまたま。
なにかが悪いとかではなくて、本当に偶然の結果であることがほとんど。
流産は、妊娠経験のある女性の40%が経験してる。
厚生労働省の統計でもはっきりとでている。
みんな、あえて流産のことは言わないから、体験した時に、自分だけじゃないかとショックを受けるけど、決して特別なことじゃないから、大丈夫。
流産は、妊娠する力があるよって知らせてくれてることでもあるのだから。
堀江昭佳のコメント